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[金管アンサンブル特集]3重奏〜クワイヤー|邦人作曲家によるオリジナル曲

鮮やかな響きが魅力の金管アンサンブル<オリジナル>

金管アンサンブルの魅力といえば、力強く輝かしいサウンドと厚みのあるハーモニー。華やかで存在感のある響きはもちろん、軽快なリズムや緻密なアンサンブル、そして金管楽器特有の包み込むような柔らかさや温かさなど、さまざまな表情を見せてくれます。金管楽器のアンサンブルの醍醐味は、そのサウンドの幅と言ってもいいでしょう。

しかし、「どんな曲を選べばいいのか」「団体の編成やレベルに合う作品が見つからない」と悩むプレイヤーも多いのではないでしょうか。特に邦人作曲家によるオリジナル作品は、日本人の感性に寄り添ったメロディが光り、アンサンブルコンテストの自由曲として高い人気を誇ります。

本特集では、金管3重奏からクワイヤーまで、邦人作曲家によるオリジナル作品を厳選してご紹介します。作曲の背景や曲調、演奏のポイントまで詳しく解説していますので、ぜひ選曲の参考にしてください。

目次

金管3重奏

ラメント|福田昌範

2020年にサカイウインドシンフォニー(茨城県)の委嘱で誕生し、同年のアンサンブルコンテストで初演された作品です。もともとは木管三重奏として作曲されましたが、出版にあたり金管三重奏用のオプショナルパートが加えられ、より幅広い編成で演奏できるようになりました。

タイトルの「ラメント(嘆き、悲しげに)」には、バッハをこよなく愛した作曲者の友人(故人)への追悼の想いが込められています。そのため全体の雰囲気は静かで内省的でありながら、随所にバロック音楽を思わせる和声や対位法的な動きが散りばめられ、深みのある音楽世界を描き出しています。

フレーズの歌い込みや音色の均衡、アンサンブル全体の呼吸感が試される作品です。特に中間部で現れる抒情的な旋律、終盤に向けて静かに沈み込むように終わっていく展開は、演奏者にも聴衆にも忘れがたい余韻を残すでしょう。

  • 作編曲: 福田昌範
  • 演奏形態: 金管3重奏(Trp./Hr. or Trp./Trb. or Eup. )
  • グレード: 3+
  • 演奏時間: 5分30秒
  • 出版: フォスターミュージック(FME-0508)
  • 発売日: 2021/09/16

トリオ・シャンソネット:福田洋介

2008年に杉並区立西宮中学校吹奏楽部の委嘱で作曲された金管三重奏作品です。編成はトランペット・トロンボーン・ユーフォニアムという珍しい組み合わせで、やや低音寄りの響きが特徴。

曲調はルネサンス期のカンツォーナに着想を得ており、全体に古風で懐かしさを感じさせる響きが漂います。教会旋法(ミクソリディア、ドリアなど)が用いられ、現代的な和声感とは一味違う独特の音階感が印象的。冒頭のファンファーレから始まり、パヴァーヌ風の歌、軽快な2拍子の舞曲、3拍子の舞曲と歌、フーガ、そして再びファンファーレへと展開していく構成は、短いながらも変化に富み、演奏する側も聴く側も飽きさせません。

演奏にあたっては、段落ごとに性格の異なるリズムやアーティキュレーションを明確に表現することがポイント。特に教会旋法を基にした旋律は、シンプルな中に奥深さがあり、フレーズの作り方ひとつで音楽の雰囲気が大きく変わります。響きを整えながら、各セクションのキャラクターを際立たせていくことで、曲全体にドラマ性と統一感をもたせることができるでしょう。

中高生の金管アンサンブルにとって、音楽性を磨きながら楽しめる一曲です。

  • 作編曲: 福田洋介
  • 演奏形態: 金管3重奏(Trp./Trb./Eup.)*Trb,Euph入れ替え可
  • グレード: 3
  • 演奏時間: 5分0秒
  • 出版: フォスターミュージック(FME-0149)
  • 発売日: 2012/03/29

金管4重奏

金管四重奏曲第一番「天空への賛歌」|福田昌範

2019年に金管中低音アンサンブルのために書かれた作品です。編成はトロンボーン2本・ユーフォニアム・チューバという、低音を中心とした重厚な響きが楽しめる構成。

冒頭は現代音楽的な和声による力強いファンファーレで幕を開け、続く調性音楽のフレーズではユーフォニアムが美しい旋律を奏でます。この旋律が曲全体の「賛歌」となり、作品の核を形作ります。中間部ではテンポの速い激しいフレーズが展開され、緊張感と迫力を高めながら再び「賛歌」へと回帰。最後は壮大なクライマックスを迎え、天空へ響き渡るような余韻を残して曲が閉じられます。

現代的な和声と調性的な美しい旋律が交錯する構成は、演奏する側にも高度な表現力を求めます。低音主体のアンサンブルならではの厚みと存在感をいかしつつ、各パートの役割を明確に示すことで、音楽に立体感を生み出せるでしょう。特にユーフォニアムの旋律は作品の象徴ともいえるため、豊かに歌い上げることが大切です。

この曲は5重奏版にもリアレンジされ、2020年第1回日本ブラスバンド・アンサンブル・ナショナルチャンピオンシップ全国大会で第3位を受賞。中低音セクションの魅力を前面に押し出し、技術的にも聴き映えの点でもインパクトを残すプログラムを組みたい団体におすすめです。

5重奏版もあり、編成に合わせてお楽しみください。

  • 作編曲: 福田昌範
  • 演奏形態: 金管4重奏(Trb. 1/Trb. 2/Eup./Tuba )
  • グレード: 4
  • 演奏時間: 5分0秒
  • 出版: フォスターミュージック(FME-0478)
  • 発売日: 2021/01/14

金管5重奏

イジャイ〜永遠の輝き〜:清水大輔

エテルノ・ブラス・クインテットの結成10周年コンサートのために書かれた金管五重奏作品です。演奏時間は約6分、グレードは中上級向けで、アンサンブルコンテストの自由曲にも十分なスケール感を備えています。

タイトルの「ILLAY(イジャイ)」は、インカ民族の言語ケチュア語で「輝き」を意味し、副題の「sonido eterno」はスペイン語で「永遠の響き」という意味。メンバーの渡辺アキラ氏の出身地ペルーから着想を得て、南米音楽のリズムや色彩を随所に散りばめています。

曲は底抜けの明るさに満ち、ユーモラスで遊び心に溢れた展開が続きます。軽快なリズムに乗せた陽気な旋律、ふざけたようなやりとり、鮮やかに変化する和声──聴衆を自然と笑顔にさせる魅力が詰め込まれています。一方で、南米音楽特有のエネルギーと生命力を感じさせるダイナミックな部分もあり、華やかなクライマックスに向けて盛り上がっていく構成は、まさに「永遠の輝き」を体現しています。

演奏にあたっては、リズムの切れ味とアンサンブルの掛け合いが重要なポイントです。テンポの揺れやリズムの遊びを大胆に楽しみながら、金管五重奏ならではの明るく輝かしい響きを存分に響かせることで、この作品の真価が発揮されるでしょう。

エテルノ・ブラス・クインテットさんの動画も参考に、陽気でエネルギッシュな金管サウンドを目指してください。

  • 作編曲: 清水大輔
  • 演奏形態: 金管5重奏(Trp. 1/Trp. 2/Hr./Trb./Tuba/)
  • グレード: 4+
  • 演奏時間: 6分5秒
  • 出版: フォスターミュージック(FME-0646)
  • 発売日: 2025/09/04

三つの心象|追榮祥

金管五重奏のために書かれた三楽章構成の作品で、タイトルの「心象」はそれぞれの楽章が描くイメージを指しています。短い時間の中に多彩な表情が詰め込まれ、演奏者の技術と表現力が試される一曲です。

第1楽章「諧謔(Jest)」
冒頭から軽快なテンポで、主要動機が細かく発展していきます。せわしなく動き回る音型は、まるで人間の滑稽さをユーモラスに映し出すかのよう。リズムのキレを生かしながら、ウィットに富んだ表現を目指すことで、楽章のユーモアがより際立ちます。

第2楽章「不安(Anxiety)」
穏やかに進行する旋律の裏で、和音がじわじわと緊張を高め、心の平静が乱されていく様子を描きます。響きの中で生じる“安らぎと不安のせめぎ合い”が、この楽章の核心です。

第3楽章「焦燥(Nervousness)」
複数のリズムが絡み合い、落ち着かない心情を描き出すスピード感あふれる楽章。細かな拍子変化への注意が必要です。フレーズ全体を大きく捉えることで説得力のある音楽に仕上がります。慌ただしさの中にも統一感を持たせることが、演奏成功の鍵となるでしょう。

三つの楽章を通じて、心の移ろいや内面のドラマを表現するこの作品は、コンテスト自由曲としても大きなインパクトを残します。技巧面だけでなく、各楽章のキャラクターをどう描き分けるかが勝負どころ。音楽的な挑戦と表現の幅を与えてくれる一曲です。

  • 作編曲: 追榮祥
  • 演奏形態: 金管5重奏(Trp. 1/Trp. 2/Hr./Trb./Tuba )
  • グレード: 4+
  • 演奏時間: 7分0秒
  • 出版: フォスターミュージック(FME-0495)
  • 発売日: 2021/07/21

おとぎの森(金管5重奏版):高橋宏樹

富山県高岡市に実在する総合公園「おとぎの森公園」を題材にした金管五重奏作品です。子どもから大人まで親しまれる花と緑にあふれた公園を舞台に、園内のさまざまな風景や施設を音楽で描き出しています。委嘱は富山出身のメンバーで構成された金管五重奏団「ブラス・コレクション」によるもので、2016年10月に初演されました。4つの小品から成る組曲形式となっており、それぞれに個性豊かな情景が表現されています。

第1曲〈展望台のファンファーレ〉
園内を見渡す展望台と、その向こうに広がる立山連峰の壮大な景色を力強いファンファーレで描写。冒頭から金管の輝かしいサウンドが響き渡り、作品全体の幕開けを華やかに告げます。

第2曲〈アトリウムガーデン〉
温室に咲く南国の花々をイメージしたラテン調の音楽。軽快なリズムとカラフルなハーモニーが南国的な明るさを醸し出し、演奏者にも聴衆にも楽しい場面となります。旋律のモティーフには富山にゆかりの花の名が隠されており、作曲者の遊び心も感じられます。

第3曲〈ある空き地にて〉
某国民的アニメに登場する空き地の夕暮れを想起させる一曲。懐かしさを帯びた旋律には、聴く人それぞれの原風景を呼び起こすような温かみがあり、作品の中でも特に情緒的な瞬間を生み出します。

第4曲〈メルヘンの森〉
元気いっぱいに遊ぶ子どもたちの姿を森の小人に重ね合わせた、軽快で明るいフィナーレ。跳ねるようなリズムと生き生きとした旋律が、終曲にふさわしい高揚感をもたらします。

全体を通じて、親しみやすいメロディーと鮮やかな場面転換が魅力の作品です。演奏にあたっては曲ごとのキャラクターを明確に切り替え、物語を紡ぐように進めることがポイント。コンテストでは表現力豊かなプログラムとして、またコンサートでは幅広い世代に楽しんでもらえるプログラムとしてオススメです。

  • 作編曲: 高橋宏樹
  • 演奏形態: 金管5重奏(Trp. 1/Trp. 2/Hr./Trb./Tuba (* E.Bass))
  • グレード: 3
  • 演奏時間: 5分0秒
  • 出版: フォスターミュージック(FME-0381)
  • 発売日: 2017/12/14


パラサイティック・ジョイ|清水大輔

タイトルの“Parasitic Joy(寄生する喜び)”は、演奏者がこの曲を奏でることで生まれる楽しさが聴衆へと伝播し、会場全体を「喜び」で満たしてほしいという願いを込めたものです。そのコンセプト通り、華やかで生命力にあふれた音楽がとなっています。

冒頭は「やぁ!元気だった?」と声をかけるようなファンファーレで始まり、その後は楽器同士が相づちを打ち、笑い合い、時には一緒に歌うようにメロディを重ねていきます。場面によってにぎやかになったり、穏やかに語り合ったりと、音楽は喜びにあふれた表情で展開し、まさに金管楽器たちが会話をしているようかのように掛け合いを繰り広げる、とても楽しい一曲です。

コンサートでは客席との距離を一気に縮めるような親しみやすさがあり、アンサンブルコンテストでは金管の華やかさと表現力を存分にアピールできます。

初期に発売された音源CDは廃盤となっていますが、現在は Naxos Music Library で配信されており、参考演奏を聴くことができます。

  • 作編曲: 清水大輔
  • 演奏形態: 金管5重奏(Trp. 1/Trp. 2/Hr./Trb./Tuba )
  • グレード: 3+
  • 演奏時間: 5分10秒
  • 出版: フォスターミュージック(FME-0008)
  • 発売日: 2008.10.10

金管6重奏

交響的序曲(金管6+打2):福田昌範

2021年9月、茨城県石下西中学校吹奏楽部顧問・渡辺桂子先生の依頼により作曲された金管打楽器八重奏作品です。編成はトランペット2本、ホルン、トロンボーン、ユーフォニアム、チューバに、2人の打楽器奏者を加えた8名編成。金管アンサンブルに彩り豊かな打楽器群を融合させることで、スケール感のある響きが実現されています。

冒頭はティンパニと共に荘厳なファンファーレで幕を開け、続いて日本的な旋律をモチーフとしたリズミカルな音楽が展開します。中間部では懐かしい情景を思わせる叙情的な旋律が現れますが、やがて音楽は賑やかな祭りのような高揚感へと発展。終盤は再び快活なテンポに戻り、壮大で華やかなクライマックスを迎えて幕を閉じます。

金管の迫力あるサウンドに加え、チャッパや神楽鈴など和の雰囲気を感じさせる打楽器の音色がアクセントとなり、ステージ映えするのも大きな魅力です。演奏にあたっては、各場面のキャラクターを明確に切り替え、特に打楽器とのアンサンブルバランスを丁寧に整えることで、より立体的で生き生きとした表現が可能になるでしょう。

和のテイストと祝祭感を兼ね備えたこの作品は、アンサンブルコンテストの自由曲はもちろん、地域の演奏会や学校行事にもオススメ。日本的な旋律を現代的にアレンジした響きが、聴衆に親しみやすさと迫力を同時に届けてくれる一曲です。

  • 作編曲: 福田昌範
  • 演奏形態: 金管8重奏(Trp. 1/Trp. 2/Hr./Trb./Eup./Tuba/Perc. 1 (Timp., Tri., Chanchiki)/Perc. 2 (S.Cym., W.Block, Sligh Bell or Kagura-suzu, Bongo, Tom, Vib., Xylo.,Glock.))
  • グレード: 3+
  • 演奏時間: 5分0秒
  • 出版: フォスターミュージック(FME-0513)
  • 発売日: 2021/12/02

古い祈りの音楽による狂詩曲(金管6+打2):福田昌範

2021年10月に茨城県泉丘中学校吹奏楽部顧問・尾花亜希先生の依頼により作曲された金管打楽器八重奏作品です。編成はトランペット2本、ホルン、トロンボーン、ユーフォニアム、チューバに2名の打楽器奏者を加えた8名。

冒頭はティンパニの力強いソロで始まり、聴衆を一気に作品世界へと引き込みます。その後、11世紀の古い聖歌をモチーフとした旋律が、さまざまな形に姿を変えながら展開。中間部ではトランペットのソロが印象的に響き、やがて壮大なフガートへと発展していきます。後半では再び聖歌が高らかに奏でられ、快活なテンポのユニゾンを経て、堂々たるクライマックスで幕を閉じます。

古の祈りの響きと、金管・打楽器ならではの力強さが融合し、重厚でドラマティックな音楽を生み出しています。演奏にあたっては、ティンパニや打楽器の存在感をしっかりと引き立てつつ、金管の厚みとバランスをどうまとめるかが鍵となります。フガート部分ではリズムの明確さと推進力を保ち、終盤に向けて音楽を大きくうねらせることで、作品全体のスケール感が際立つでしょう。

荘厳さと力強さを兼ね備えた本作は、アンサンブルコンテストで独自性を示したい団体にオススメ。聖歌を題材にした音楽が持つ精神性と、現代的なリズムや響きの融合が、演奏者と聴衆の双方に深い印象を残すでしょう。

  • 作編曲: 福田昌範
  • 演奏形態: 金管8重奏(Trp. 1/Trp. 2/Hr./Trb./Eup./Tuba/Perc. 1 (Timp., C.Cyms., Tri.)/Perc. 2 (Gong, Glock., S.Cym., Drum set))
  • グレード: 3
  • 演奏時間: 5分0秒
  • 出版: フォスターミュージック(FME-0512)
  • 発売日: 2021/12/02

金管8重奏

ビヨンド・ザ・シー|近藤悠介

近藤悠介《ビヨンド・ザ・シー》は、2019年に静岡県沼津市立大岡中学校吹奏楽部の委嘱で作曲された金管八重奏作品です。沼津の地に広がる駿河湾の雄大な海をイメージし、「急―緩―急」の三部形式で構成されています。

冒頭は華々しいファンファーレで幕を開け、青く澄んだ海を思わせるように快活に曲は進んでいきます。中間部は一転して穏やかになり、遠く水平線を眺めるような広がりが感じられる抒情的な旋律が登場。最後は再び活気あるテンポに戻り、駆け抜けるようなエネルギーで締めくくります。

急と緩のコントラストが鮮やかで、演奏にあたっては場面ごとの表情をしっかり切り替えることがポイントです。前半と終盤の躍動感では正確なリズムとアンサンブルの一体感が求められ、中間部では金管らしい豊かな歌心を発揮することで、作品の魅力がより際立ちます。

雄大な海のスケールを音で描き出すこの作品は、聴衆にとってもイメージを膨らませやすく、コンテストの自由曲や演奏会プログラムに大きなインパクトを与えるでしょう。

  • 作編曲: 近藤悠介
  • 演奏形態: 金管8重奏(Trp. 1/Trp. 2/Hr. 1/Hr. 2/Trb. 1/Trb. 2/Eup./Tuba )
  • グレード: 3
  • 演奏時間: 4分40秒
  • 出版: フォスターミュージック(FME-0566)
  • 発売日: 2023/08/23

ファースト・キャロル|井澗昌樹

岐阜県立羽島高等学校吹奏楽部のために作曲された金管八重奏作品です。初演はクリスマスの季節であったことから「キャロル」と題されましたが、単なる祝祭音楽にとどまらず、「一年に一度訪れる特別な一日」と人の営みを重ね合わせた深い思索が込められています。

作曲者自身が語るように、同じ日が巡るようでいて、昨日と今日、今日と明日は決して同一ではなく、すべてが新しい瞬間。そうした「時の流れ」や「日々の変化」に想いを馳せながら書かれたこの作品は、キャロル=賛歌でありつつも、人生の営みを象徴する音楽として響きます。

演奏にあたっては、音色の統一感とフレーズの息遣いを大切にすることが重要です。派手な技巧に頼らずとも、アンサンブルのハーモニーと時間の流れを丁寧に描くことで、作品の本質である「普遍的な一日の輝き」を表現できます。深みのある音楽に挑戦したい学生プレイヤーにもおすすめの一曲。

  • 作編曲: 井澗昌樹
  • 演奏形態: 金管8重奏(Trp. 1/Trp. 2/Hr. 1/Hr. 2/Trb. 1/Trb. 2/Eup./Tuba )
  • グレード: 3+
  • 演奏時間: 5分0秒
  • 出版: フォスターミュージック(FME-0412)
  • 発売日: 2019/02/06

金管クワイヤー

シネマティック・テューンズ|三浦秀秋(9重奏)

「架空の映画会社が作った架空の映画音楽のサウンドトラックをブラスアンサンブルに編曲した組曲作品」というコンセプトで書かれたこの組曲は、短い5楽章で構成され、オープニングのジングルから、エンドクレジットまで、作曲者である三浦さんの映画音楽への造詣の深さと遊び心に溢れています。

  • I. Movie Studio’s Logo ムービースタジオ・ロゴ
  • II. Dr. Smithee’s Adventure スミシー博士の大冒険
  • III. Lime Night Serenade ライム・ナイト・セレナーデ
  • IV. “Where’s the rabbit?” ウサギはどこへ行った?
  • V. End Credits エンド・クレジット
  • 作編曲: 三浦秀秋
  • 演奏形態: 金管9重奏
  • 演奏時間: 10分0秒
  • 出版: フォスターミュージック(FME-0469)
  • 発売日: 2020/10/15

「ペガスス三部作」第1曲:ブラス・アンサンブルのためのフラリッシュ《サルムの光》|中橋愛生

2005年10月2日に行われた、さいたまファンファーレクラブの第10回演奏会のために書いたのが「サルムの光」。のちに2曲を追加して「ペガスス座三部作」となりました。さいたまファンファーレクラブの略号「SFC」を「S(ミ♭)→ F(ファ)→ C(ド)」という音列に置き換えて、そこから取り出した「長二度→完全五度」という音程進行が、全曲を通じた統一主題となっています。

SFCのシンボルであるペガサスはギリシア神話に登場する翼を持つ天馬。メデューサの血から生まれてペルセウスの愛馬となったペガサスは、芸術の女神ミューズたちに可愛がられていたと言われています。曲にはそれぞれ、ペガスス座にある恒星の名前が付けられ、その星から着想を得て作曲されています。

「サルム」はτ(タウ)星。星言葉は「高い理想に進むペガスス」(3月10日)。「フラリッシュ」(フローリッシュとも)はファンファーレの中でも特に華やかなものを指す言葉。輝かしい未来へ向けてのファンファーレ。

  • 作編曲: 中橋愛生
  • 演奏形態: 金管10重奏
  • 演奏時間: 1分30秒
  • 出版: フォスターミュージック(FME-0470)
  • 発売日: 2020/10/15

「ペガスス三部作」第2曲:ブラス・アンサンブルのためのコラール《マタルの涙》|中橋愛生

「マタル」はη(イータ)星。星言葉は「恋にのめり込む集中力」(2月29日)。「雨の守り神」の意味を持つ「マタル」は、幸運をもたらす雨を降らせるといいます。「コラール」は本来はプロテスタントの賛美歌である四声の合唱曲ですが、ここでは慈愛を讃える歌という程度の意味で用いています。

  • 作編曲: 中橋愛生
  • 演奏形態: 金管10重奏
  • 演奏時間: 3分0秒
  • 出版: フォスターミュージック(FME-0471)
  • 発売日: 2020/10/15

「ペガスス三部作」第3曲:ブラス・アンサンブルのためのトッカータ《マルカブの矢》|中橋愛生

「マルカブ」はα(アルファ)星。星言葉は「直感と計画性のサクセス」(3月6日)。「乗り物(馬の鞍)」という意味を持つこの星は「秋の大四辺形」を形成する星の1つとしても知られています。7月に観測される「ペガスス座流星群」の放射点がマルカブのすぐ近くであるのは、稲妻の運搬役でもあったペガサスらしい不思議な一致です。そんなマルカブを題材としたこの曲は、疾走感あるトッカータ(走句が多用される楽曲)となっています。

  • 作編曲: 中橋愛生
  • 演奏形態: 金管10重奏
  • 演奏時間: 3分0秒
  • 出版: フォスターミュージック(FME-0472)
  • 発売日: 2020/10/15

アンサンブルで金管楽器の表現の幅を広げよう

金管アンサンブルは、編成の自由度や表現の幅広さに加え、作曲家の個性が色濃く反映されているのが大きな魅力です。響きの厚みや迫力を活かした曲もあれば、遊び心やユーモアにあふれた曲、あるいは深い祈りや抒情を描いた作品もあり、それぞれが演奏者と聴衆に新たな体験をもたらしてくれます。

演奏に取り組む過程で、リズムの正確さや音色のバランス、フレーズの歌い方といったアンサンブルの基礎力が磨かれるだけでなく、仲間と音楽を「語り合う」楽しさも感じられるでしょう。

ぜひ、今回ご紹介した作品の中から、自分たちの編成やカラーに合った一曲を見つけてください。そして、コンテストのステージやコンサートで、金管ならではの輝きと喜びを響かせてみてください。

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