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クラリネット八重奏の先駆者、オブロークラリネットアンサンブル

オブロークラリネットアンサンブル(Hobereaux Clarinet Ensemble)は、1975年に結成された日本初のプロのクラリネット八重奏団です。編成はE♭クラリネットからコントラバスクラリネットまで8本のクラリネットで、実に6オクターブもの音域をカバーします。

結成当時はクラリネット8重奏の楽譜がほとんど存在せず、自らレパートリーを開拓してきた歴史があり、「クラリネットアンサンブルの発展のためにレパートリーを増やす」「アンサンブルの楽しさを広める」ことを目標に掲げて活動し、東京での毎年のリサイタルや国内各地での演奏会、CD録音など精力的に活動し、クラリネット八重奏という編成を日本に定着させた先駆者的存在です。クラシックの弦楽合奏曲やオーケストラ曲からスウィングジャズ、ラテン音楽、そしてオリジナルのクラリネットアンサンブル曲まで幅広いジャンルをレパートリーに持ち、卓越したテクニックと豊かな音楽性、色彩感あふれる演奏で高い評価を得ています。

団体名「オブロー(Hobereaux)」はフランス語で「小さな鷹」という意味で、若い鷹が大空へ羽ばたくように常に高みを目指すという未来への希望が込められています。2025年に結成50周年を迎えるオブロークラリネットアンサンブルの魅力を改めてご紹介します。

目次

オブロークラリネットアンサンブル:メンバー

2025年現在

  • E♭ Clarinet:渡邊 一毅 Kazuki Watanabe
  • B♭ Clarinet:金井 清 Kiyoshi Kanai
  • B♭ Clarinet:西村 薫 Kaoru Nishimura
  • B♭ Clarinet:齋藤 ちあき Chiaki Saito
  • B♭ Clarinet:関 璃菜 Rina Seki
  • Bassethorn:鈴木 生子 Ikuko Suzuki
  • Bass Clarinet:三木 薫 Kaoru Miki
  • ContrabassClarinet:谷口 玄徳 Motonori Taniguchi

オブロークラリネットアンサンブル 結成50周年記念リサイタルvol.32
「オブローの魔法使いの弟子」〈終演〉

  • 日時:2025年6月26日(木)
    • 18:15開場
    • 19:00開演
  • 会場:渋谷区文化総合センター大和田さくらホール
  • プログラム
    • 藤倉大:クラリネットデュオのためのツイン・ツイーツ
    • 石毛里佳:ヤクラ (委嘱作品)
    • A.ピアソラ:タンゴ組曲 arr.かとうまさゆき
    • 新井千悦子:0260 (委嘱初演)
    • P.デュカス:魔法使いの弟子 arr.小栗克裕

オブロークラリネットアンサンブル 作編曲作品

魔法使いの弟子|ポール・デュカス arr. 小栗克裕

フランスの作曲家ポール・デュカスによる交響詩「魔法使いの弟子」は、原曲では大編成オーケストラによる色彩豊かな名曲で、ディズニー映画『ファンタジア』でも有名です。それをクラリネット8重奏に編曲したのが小栗克裕氏で、2005年に発売されたオブロー初のCDアルバムのタイトル曲にもなりました。

クラリネットの音色ってこんなに多彩だったのかと驚かされるような鮮やかな響きで、クラリネットのみでオーケストラ作品を再現する醍醐味が詰まったアレンジとなっています。

  • 作編曲: ポール・デュカス(デュカ) arr. 小栗克裕
  • 演奏形態: クラリネット8重奏(Eb Cl./Bb Cl. 1/Bb Cl. 2/Bb Cl. 3/Bb Cl. 4/Basset-Hr. (or A.Cl.)/Bs.Cl./C.A. Cl. (or C.B. Cl.))
  • グレード: 4+
  • 演奏時間: 11分0秒
  • 出版: フォスターミュージック(FME-0140)
  • 発売日: 2011/12/02

ヤクラ|石毛里佳

タイトルの「ヤクラ」は、8本のクラリネットによる八重奏を意味する造語です。「8人」という編成は、一見多いようで少なくもあり、アンサンブルとしての面白さが凝縮された編成。作曲者はこの人数を活かし、各奏者が独立した動きを持つような構成を意識して作り上げました。

序盤に現れる鋭いユニゾンは聴く者の耳を一瞬で惹きつけ、その後は16分音符のリズミカルなモチーフが楽曲全体を貫くようにトランスフォーメーションしていきます。それぞれの奏者に個性が求められるため、一人ひとりの技術、そして緻密なアンサンブル力が試される作品と言えるでしょう。

作曲者は「8人は多かった」と語りつつも、オブローの初演ではその複雑な構成が見事に整理され、音楽として力強く昇華されました。各パートが互いに絡み合いながらも、過度に混濁せず、見通しの良いサウンドが印象的です。

クラリネットアンサンブルの新たな可能性を感じさせる、スリリングかつクールな一曲。演奏会の中盤やコンテストにもふさわしい、現代的な響きを持つ作品です。

  • 作編曲: 石毛里佳
  • 演奏形態: クラリネット8重奏(Eb Cl./Bb Cl. 1/Bb Cl. 2/Bb Cl. 3/Bb Cl. 4/A.Cl./Bs.Cl./C.A. Cl. )
  • グレード: 4
  • 演奏時間: 5分40秒
  • 出版: ブレーンミュージック(ENMS-84385)
  • 発売日: 2014/07/11

タンゴ組曲|アストル・ピアソラ arr. かとうまさゆき

アルゼンチン・タンゴの巨匠アストル・ピアソラの「タンゴ組曲」は、本来ギター二重奏曲として書かれた3つの楽章からなる作品ですが、かとうまさゆき氏がクラリネット8重奏向けに編曲しレパートリーに加えました。軽快かつ情熱的なタンゴのリズムとメロディーをオブローの見事なアンサンブルで特有の哀愁と躍動感を表現しています。

ピアソラ作品はオブローのお家芸とも言え、他にも「リベルタンゴ」や「天使の死」「フーガと神秘」といったピアソラの名曲アレンジを多数レパートリーにしています。ぜひ挑戦してみてください。

  • 作編曲: アストル・ピアソラ arr. かとうまさゆき
  • 演奏形態: クラリネット8重奏(Eb Cl./Bb Cl. 1/Bb Cl. 2/Bb Cl. 3/Bb Cl. 4/Basset-Hr. (or A.Cl.)/Bs.Cl./C.A. Cl. (or C.B. Cl.) )
  • グレード: 5
  • 演奏時間: 18分0秒
  • 出版: フォスターミュージック(FME-0047)
  • 発売日: 2009/12/09

ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら|リヒャルト・シュトラウス arr. 中村克己

オーケストラ曲からの編曲としてもう一つ代表的なのが、リヒャルト・シュトラウスの交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」です。中村克己氏がクラリネット8重奏用に編曲し、2008年発売のCDアルバム『オブローのティル』のタイトル曲となりました。

おどけ者ティルの冒険を描いた原曲の複雑で目まぐるしい音楽を、8本のクラリネットだけで表現するスリリングなアレンジで、オブローアンサンブルの楽譜の中でも最高峰の難度を誇ります。ソロからアンサンブルまで各奏者に超絶技巧が要求されるため、プロやトップレベルのアンサンブル向けの作品と言えるでしょう。しかしその分、演奏し切った時の達成感や聴衆の興奮度は格別です。コミカルな旋律の掛け合いや豪快なクライマックスなど、クラリネットだけとは思えないダイナミックな音世界が展開し、聴き応えは抜群の名アレンジです。

  • 作編曲: シュトラウス arr. 中村克己
  • 演奏形態: クラリネット8重奏(Eb Cl./Bb Cl. 1/Bb Cl. 2/Bb Cl. 3/Basset Hr. 1 or A.Cl./Basset Hr. 2 or A.Cl./Bs.Cl./C.B. Cl. (* C.A. Cl. or S.Bs.) )
  • グレード: 5
  • 演奏時間: 15分30秒
  • 出版: フォスターミュージック(FME-0338)
  • 発売日: 2016/05/12

「ふるさと」による変奏曲|岡野貞一 arr. 小栗克裕

唱歌「ふるさと」に前奏と後奏をつけ、テーマと二つの変奏曲にまとめました。

静かに、遠い山里を思い出すかのようにシンプルな「ふるさと」の旋律が現れ、そこから変奏へと展開していきます。哀愁漂う響きもあり、それぞれの変奏がまるで一枚の風景画を角度を変えて眺めているような、そんな感覚を味わえる作品です。

技術だけでなく「歌心」が何より大切になる楽曲です。音の重なりに耳を傾けながら、故郷の情景や大切な記憶を思い起こすように演奏すると、この作品はより深い感動を与えてくれるでしょう。

演奏会のラストやアンコール、または記念の演奏にもふさわしい一曲。クラリネットという楽器がもつあたたかく繊細な魅力を、最大限に引き出してくれる秀逸なアレンジです。

  • 作編曲: 岡野貞一 arr. 小栗克裕
  • 演奏形態: クラリネット8重奏(Eb Cl./Bb Cl. 1/Bb Cl. 2/Bb Cl. 3/Bb Cl. 4/Basset-Hr. (or A.Cl.)/Bs.Cl./C.A. Cl. (or S.Bs. / C.B. Cl.))
  • グレード: 3+
  • 演奏時間: 4分10秒
  • 出版: フォスターミュージック(FME-0136)
  • 発売日: 2011/10/14

亡き王女のためのパヴァーヌ|モーリス・ラヴェル arr. 渡邊一毅

管弦楽版をを基に渡邊一毅氏が、情緒豊かなクラリネットアンサンブルに編曲しました。

パヴァーヌとは、自由にステップを踏みながら行進した行列舞踏のことですが、クラリネットによって生み出される味わい深い音色が、ゆったりとしたリズムとともに、おすましをしてしずしずと進む小さな王女を感じさせます。

この題名の「亡き王女」というのは特定の王女を指すのではなく、その昔あるスペインの宮廷にいた小さな王女、というような意味がラヴェルの意図したもののようです。スペインの哀愁を感じさせるメロディーにのせて、小さな王女のあどけなさと気品を感じながら演奏して欲しい一曲です。

  • 作編曲: モーリス・ラヴェル arr. 渡邊一毅
  • 演奏形態: クラリネット8重奏(Eb Cl./Bb Cl. 1/Bb Cl. 2/Bb Cl. 3/Bb Cl. 4/Basset-Hr. (* A.Cl.)/Bs.Cl./C.A. Cl. (* C.B. Cl.))
  • グレード: 3+
  • 演奏時間: 6分0秒
  • 出版: フォスターミュージック(FME-0247)
  • 発売日: 2014/04/24

まとめ&オブロークラリネットアンサンブル関連楽譜のご紹介

半世紀にわたり活動を続けてきたオブロークラリネットアンサンブルは、数多くの意欲的な編曲と演奏によってクラリネットアンサンブルの可能性を切り開いてきました。蓄積されたレパートリーは、全国のクラリネット愛好家にも普及し、各地のアンサンブルコンテストや演奏会で演奏されています。

豊かな響きと卓越した技巧で描かれるオブローの音楽が、クラリネットという楽器の新たな魅力を引き出し、今後もその活躍と発信に大いに期待が寄せられています。

オブロークラリネットアンサンブルの演奏は、SpotifyやApple Musicなど各種音楽配信プラットフォームでも聴くことができますので、プレイリストに追加してお楽しみくださいね。

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