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吹奏楽「梁塵秘抄〜熊野古道の幻想|福島弘和」を解説!楽曲テーマ、編成、演奏ポイントまとめ

吹奏楽曲の中で人気楽曲の1つである「梁塵秘抄〜熊野古道の幻想〜」。 人数や楽器構成、グレード、演奏時間、曲のテーマやストーリーなど、演奏や鑑賞がより豊かになる情報をぎゅっとまとめました。コンクール自由曲の選曲や楽曲分析のために情報収集をしている方、必見の解説記事です。

目次

『梁塵秘抄〜熊野古道の幻想〜』のテーマ・ストーリー

「梁塵秘抄」とは、後白河法皇が当時の流行歌謡詩を集め編集したもので、主として「今様」と呼ばれる平安末期に流行した声楽の集大成です。この曲は、梁塵秘抄の中で歌われている「熊野古道」からインスピレーションを得て作曲されました。

和歌山県新宮市の熊野速玉大社と田辺市の熊野本宮大社。そして那智勝浦町の熊野那智大社。伊勢神宮から険しい峠を越えて、これら熊野三山を詣でるために通る祈りの道が熊野古道です。

紀伊山地には、熊野三山の他に「高野山」「吉野・大峯」という霊場があります。これら三つの霊場とそれらを結ぶ参詣道、そして自然と人の営みが長い時間をかけて形成した文化的景観が「紀伊山地の霊場と参詣道」として2004年に世界遺産に登録されました。

このように、現在では文化的な価値が非常に高い熊野古道ですが、当時の後白河法皇もとても気に入っており、熊野詣をした歴代上皇の中でも最多と伝えられています。熱烈な熊野信者であった後白河法皇が編集した梁塵秘抄にも、熊野古道についての歌が幾度か登場します。梁塵秘抄の中で歌われている熊野古道は、死者の魂の行く所「黄泉の国」として崇められ、人々は死者の極楽往生や魂の再生「黄泉がえり」を祈りながら険しい道を歩いたとされています。

また、後白河上皇は、梁塵秘抄でこう述べています。

 この今様、今日行われているのは娯楽一本というわけではない。心を尽くして神社・仏寺に参って歌うと、示現(神仏が霊験を現わすこと)を被り、望みが叶わないということがない。官職を望むことも、命を延ばすことも、病をたちどころに治すことも可能だ

後白河法皇の望むところは、極楽往生。そのための熊野詣だったのかもしれません。

古くには「伊勢に七度、熊野に三度」という言葉もあったほど、誰もが訪れたいと願う憧れの地であり、そのような熊野古道には、 今でもその景観や歴史・文化が随所に息づいています。

楽曲の特徴

まずは、作曲家・福島和弘氏からのコメントをチェックしてみましょう。

梁塵秘抄は後白河法皇が当時の流行歌謡詞を集め編集したもので、仏神、遊女、庶民の様々な歌などがあり、日常生活の心情を歌ったり、洒脱した表現なものまで伺えました。

この曲では2箇所のテンポの速い部分がそれを現しています。副題の「熊野古道の幻想」は曲全体の世界観を現しています。

この曲の中間部のゆっくりした所で、同じパターンのコード進行が循環し、その上の旋律が展開していく所は、輪廻転生を表せれば良いなと思い書きました。冒頭や主題の所は霧に包まれた山深い情景や、そこを行き交う人々の心情を表現しています。(抜粋)

締太鼓や当り鉦(あたりがね)などが平安時代を想起させるように幕が上がると、木管楽器を中心としたメロディで熊野古道のもつ神話にも思えるような神秘的な雰囲気を表現します。

曲が進みテンポが上がると、管楽器の賑やかなメロディに合わせて和太鼓や当り鉦が混ざり、どんどん華やかで熱気を帯びていきます。日常生活を彩る歌謡詩や当時の流行を楽しむ人々の心が想起されるパートです。

場面が静かになり、フルートの麗しいソロが響くと木管楽器のユニゾンで場面転換。クラリネットとフルートの細かなパッセージが速度を増してゆき、その上で旋律が展開する、輪廻転生を表現した場面へと進んでいきます。

クライマックスでは、フルートやシロフォンなどの三連符に続いて木管楽器全体が緊張感を演出する中、金管楽器と力強いパーカッションの旋律で盛り上がり壮大に幕を閉じます。

この曲は緩急がしっかりしていて、曲のテンポによって様々な場面を表現しています。特にゆったりとした部分では、曲想に合わせてテンポを揺らしてみてください。

編成(演奏人数)は?

「梁塵秘抄〜熊野古道の幻想〜」は、中編成(34人〜)の曲です。

パーカッションは当り鉦や和太鼓・締太鼓などの和楽器がポイントになります。管楽器は比較的標準的な楽器で演奏可能です。

ピッコロ/フルート1〜2/オーボエ/バスーン/クラリネット(E♭、B♭1〜3、バス)/サクソフォン(アルト1〜2、テナー、バリトン)/トランペット1〜2、3(フリューゲルホルン)/ホルン1〜4/トロンボーン1〜3/ユーフォニアム/テューバ/弦バス/ティンパニ、パーカッション1〜4

主要ソロ:バスーン、B♭クラリネット、フルート
○B♭トランペット最高音:As

セクション中編成(34人〜)
FlutePiccolo
1,2
Oboe1
Bassoon1
ClarinetE♭
B♭ 1,2,3(div)
Bass Clarinet
SaxophoneAlto1,2
Tenor
Baritone
Trumpet1,2,3(Flugelhorn)
Horn1,2,3,4
Trombone1,2,3
Euphonium1
Tuba1(div)
String Bass1
Percussion・Timpani
・Percussion 1(S.D. & Wind Chime)
・Percussion 2(Sleigh Bells, Suspended Cymbal, Triangle, Claves, B.D. & Tam tam)
・Percussion 3(Glockenspiel, Sleigh Bells, Tam tam, Atari-gane,Crush Cymbals & Marimba)
・Percussion 4(Whip, Bass Drum, Tom or Tenor Drum, Tam tam & Xylophone)

グレード(難易度)と演奏時間

「梁塵秘抄〜熊野古道の幻想〜」はグレード4演奏時間は7分16秒です。

吹奏楽コンクール自由曲として演奏するのにちょうど良い長さです。

作曲者は?

作曲家は福島弘和。吹奏楽オリジナル楽曲です。

【略歴】東京音楽大学卒業。同大学研究科修了。オーボエを浜道晁、作曲を有馬礼子の各氏に師事する。現在、吹奏楽やオーケストラなど作編曲活動をする。また、演奏にパフォーマンスやコメディーを加えたアンサンブルポアールで演奏活動をする。1999年朝日作曲賞、2003年下谷作曲賞、2007,2012,2013年下谷奨励賞、2010年日本管打吹奏楽学会アカデミー賞作曲部門など受賞する。2001年国民文化祭、2008年全国高校総合文化祭の創作音楽を手掛けている。21世紀の吹奏楽「響宴」会員。主な作品:「ラッキードラゴン」「シンフォニエッタ祈りの鐘」ほか

今回のピックアップ楽曲紹介【商品詳細】

  • 演奏形態: 中編成(34人〜)
  • グレード: 4
  • 演奏時間: 7分16秒
  • FMP-0007(フォスターミュージック)
  • 発売日: 2007/02/01

「梁塵秘抄〜熊野古道〜」演奏動画紹介

YouTubeで公開されている団体の『梁塵秘抄〜熊野古道〜』演奏動画を集めました。たくさん演奏していただきありがとうございます!
こちらのページで紹介して欲しい、という団体様はぜひご一報ください→お問い合わせ

玉名女子高等学校吹奏楽部

フィルハーモニック・ウインズ 大阪

この曲をもっと知りたくなったら

フォスターミュージックサイトには作曲家コメントのフルバージョンをはじめ、サンプルスコアダウンロード閲覧、編成詳細、修正履歴、公式YouTube音源動画など、曲に関する情報を網羅しています。
また、YouTubeで公開されている演奏動画団体の聴き比べができるものもあるので、演奏イメージ作りにもお役立ていただけます。是非ご活用ください。

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