ハンガリーアルバレギア交響楽団ソロ首席フルート奏者として活躍、2024年のデビュー10周年を機に帰国され、日本に拠点を移す菅野力(すがのちから)さんをご紹介しましょう。
菅野力
静岡県出身。15歳よりフルートを始める。
洗足学園音楽大学、チューリッヒ芸術大学を首席で卒業。卒業演奏会、ヤマハ管楽器新人演奏会、フルートデビューリサイタルに出演。
これまでにフルートを上田恭子、大友太郎、Maria Goldschmidt、Sabine Poye´ Morelの各氏に、ピッコロを菅原潤、Haika Lu¨bckeの両氏に、室内楽を山根公男、千葉直師、渡部亨、Matthias Ziegler、Pamela Stehelの各氏に師事。
元チューリッヒオペラ管弦楽団研修生、ベルン交響楽団研修生。また、フリーランス奏者としてはグラウビュンデン州立室内管弦楽団(スイス)、アールガウ交響楽団(スイス)首席フルート奏者として、ミュンヘン交響楽団(ドイツ)プラハロイヤルフィルハーモニー管弦楽団(チェコ)、オストラヴァ・ヤナーチェクフィルハーモニー管弦楽団(チェコ)に首席ピッコロ奏者として客演。ソリストとしては、これまでにシンフォニエッタ静岡、Opera I Filharmonia Podlaska(ポーランド)、静岡交響楽団と共演。
トレヴィーゾ国際音楽コンクール(イタリア)最高位、第11回静岡県フルートコンクール一般部門第1位、パリ市レ・クレドール国際音楽コンクール(フランス)第1位。受賞者記念演奏会に出演。第7回スロヴェニア国際音楽コンクール(スロヴェニア)第1位、並びにグランプリ受賞。
シンフォニエッタ静岡フルート奏者。
重本音楽事務所所属アーティスト。
2019年6月Alba Regia Symphony Orchestra(ハンガリー)に首席フルート奏者として入団。
使用楽器:SANKYO 10K ゴールドフルート、グラナディラ木管フルート
「15歳よりフルート」とあるように、高校生から(!)フルートを始められてハンガリーのオーケストラで首席フルート奏者となるまでのストーリーを読んで、僭越ながら個人的に共感するところも多々あり、応援したいという思いから、フォスターミュージックでも作品公募のご支援を行う運びとなり、このたび5作品の公募作品初演、および菅野さんの委嘱により書かれた4作品の9曲の出版が決定しました。
音楽って、とかく幼少期からの英才教育ありきと思われることも多いかと思うのですが、始める時期にかかわらず、好きという思いがなにより大事なんだということを、菅野さんから感じてもらえるのではないかなと思いますので、ぜひこちらもご一読ください。
さて、前置きが長くなりましたが、今回の委嘱初演作品と公募入選作品を発表!
フレキシブルソロ
エーデルホフ・スケッチ|下田和輝(委嘱作品)
2022年8月、ご自身の結婚披露宴の余興で初演する吹奏楽作品として作曲されました。奥様の好きなサブドミナントマイナーやメジャー(マイナー)7th9thコード、ドミナントコード♯9thなど、いわゆるオシャレな和声がふんだんに使用されています。
タイトルの「エーデルホフ」とは、結婚式場である「ホテルモントレエーデルホフ札幌」から引用しており、披露宴会場「ワグナー」の煌びやかでシックな雰囲気と、披露宴会場から見える札幌の景色の移ろいがイメージされています。
ソロはフルートのみならず、クラリネット、アルト(or バリトン)サックス、トランペット、ヴァイオリン、ヴィオラでも演奏が可能となっていますので、ぜひフルート以外の皆さんも演奏してください。
原曲である吹奏楽版も出版される予定ですので、そちらも併せて是非演奏していただけましたら幸いです。
- 作編曲: 下田和輝
- 演奏形態: フレキシブルソロ(Fl. or Cla., A/Bsax., Trp., Vn., Vl., /Pf.)
- グレード: 3+
- 演奏時間: 4分50秒
- 出版: フォスターミュージック(FME-0608)
- 発売日: 2024/09/05
ドライビング・フォース|和田直也(委嘱作品)
2021年にSNSを通じて出会ったという和田さんと菅野さん。折に触れて和田作品を取り上げ、コンサートやYouTubeなどでも披露されており、親密な関係が伺えます。
名前を象徴するかのような力強い演奏や、活発的な演奏活動を続ける彼の姿や人柄に感銘を受け、これまでに取り上げられた作品の断片や、菅野さんの人生に大きな変化をもたらしたできごとを表したフレーズなどを曲中に織り込み、ハンガリーから日本での活動へと舞台を移し、新たなステージで活躍を続ける彼への敬意を込めて作曲されました。
下田作品同様、フルートのみならず、アルト(or バリトン)サクソフォン、バスクラリネット、トランペット、ファゴット、ユーフォニアム、(以上F-Dur版)、オーボエ、クラリネット、ソプラノ(or テナー)サクソフォン、ホルン(以上B-Dur版)で演奏可能です。
※B-Dur版は後日発売
- 作編曲: 和田直也
- 演奏形態: フレキシブルソロ(Fl., or A/BSax, BsCla., Trp., Bsn, Euph / Pf.)
- グレード: 3+
- 演奏時間: 2分50秒
- 出版: フォスターミュージック(FME-0615)
- 発売日: 2024/09/05
フルートソロ
ちょっとおどけたワルツ|中島章博(委嘱作品)
もともとフルート協奏曲のアンコールピースとして2015年に作曲された作品です。初演は、杉並公会堂で上野由恵さんがフルートソロを担当し、作曲者自身が指揮を務めるIris Philharmonic Orchestraによって行われました。
この曲は、「もし架空のフランス人作曲家がワルツを書いたらこんな感じになるのでは?」というイメージで作られています。「ちょっとおどけた」というタイトルは、不安定な調性や気まぐれな旋律やフランス風のユーモアを表現していますが、フランス風に寄せつつも、作曲者は純日本人であるという照れ隠しも込められています。
曲はシンプルな三部形式で構成されており、終盤にはテンポが上がるコーダが付け加えられています。2018年にはソロ楽器を使わないオーケストラ版に編曲され、作曲者の指揮のもとでたびたび演奏されてきました。そして、今回、菅野力氏の依頼で、フルートとピアノ版に編曲され、デビュー10周年記念リサイタルツアー東京公演で初演となります。
- 作編曲: 中島章博
- 演奏形態: フルートソロ(Fl./Pf. )
- グレード: 5
- 演奏時間: 4分10秒
- 出版: フォスターミュージック(FME-0614)
- 発売日: 2024/09/05
はじまりの時|中島章博(委嘱作品)
菅野力さんのデビュー10周年記念リサイタルツアーの東京公演でアンコール曲として演奏されることを想定して、2024年6月に作曲。「のちに吹奏楽曲としても発表できるような作品にしてみたらどうか」という提案から、最初に吹奏楽曲としてのイメージを練り、その後フルートとピアノ版を、いわばコンデンススコアのように仕上げられたそうです。
曲は、ゆったりとした序奏を持つソナタ形式で構成されており、吹奏楽向きのフレーズや展開が取り入れられています。
「具体的な情景やストーリーを描いた作品ではありませんが、昔の思い出を振り返りながらも、明るい未来へ向かうような感覚を持った曲になっているのではないかと思います。演奏者の皆さんが自分なりの物語を想像しながら演奏していただけたら、とても嬉しいです。」とのこと。
この作品が、皆さんにとって素敵な「はじまりの時」となりますよう。
- 作編曲: 中島章博
- 演奏形態: フルートソロ(Fl./Pf.)
- グレード: 4
- 演奏時間: 6分0秒
- 出版: フォスターミュージック(FME-0620)
- 発売日: 2024/09/05
新しい服を着て|得本和音(入選作品)
仕事用のスーツ、友人に会う時のカジュアルなコーディネート、自宅でくつろぐ時のパジャマ、あるいは制服、スポーツウェア、着物……、服を選ぶということは、目的に合わせ準備し選択して決定するということである。そして準備と選択を経て決定した服は、人の内なる心境を表現するだけでなく、気持ちを引き出すための手段としても機能する、と言えるのではないだろうか。
この曲は、服の選択とそれによる心情に焦点を当てた作品です。わざわざ新しい服を選択するような時、そこには思い入れのある出来事、大切な日、多かれ少なかれ、特別な心境があるのではないでしょうか。 “新しい服”の特別感と、その日の心境を3つのシーンで表現しました。(得本和音)
- 週末の小旅行のために
- 式典のために
- 普段着に(自分のために)
- 作編曲: 得本和音
- 演奏形態: フルートソロ(Fl./Pf. )
- 演奏時間: 6分0秒
- 出版: フォスターミュージック(FME-0610)
- 発売日: 2024/09/05
出航の詩~フルートとピアノのための譚詩~|船本 孝宏(入選作品)
自分は4月早々に誕生日を迎えるので、心が良い意味でもそわそわします。また今年は44歳とぞろ目になること、今の勤務先に勤めて10年を迎えることも灌漑深く、勝手ながらこの公募にシンパシーを感じ応募しました。
桜も満開となろうとする季節は卒業や進学、就職、新年度で希望と不安を胸に張り巡らせている方も多くおられることと存じます。そんな新しい旅を目の前に船が出航するまで、出発してからの物語を音楽で描きました。
出航前の情景を描いた導入に続き、船乗りの踊りの笛、そしてその雄大な景色と情景、船乗りの踊り、主人公のモチーフがそれぞれ全体にちりばめられています。この作品が希望への応援歌となりますことを期待します。(船本孝宏)
- 作編曲: 船本孝宏
- 演奏形態: フルートソロ(Fl./Pf. )
- 演奏時間: 7分0秒
- 出版: フォスターミュージック(FME-0613)
- 発売日: 2024/09/05
ミグラトリー・バード|荒井 亮介(入選作品)
冒頭は、朝靄のかかる水面の穏やかな湖にて静かに出発の覚悟を決める渡り鳥を表し、そこから仲間との飛行、そして激しい嵐を乗り越え、終盤はまだ見ぬ景色へと力強く羽ばたいて行く様子を表現しました。
菅野力さんの透き通るよう音色と、豊かで余裕のある息遣いを活かすべく、歌うようなフレーズを随所に取り入れる事を意識し、一音一音の音価が長い旋律を入れて、力強い高音が響くようにイメージしました。アンサンブルの楽しさを味わえるよう、両パートのメロディの入れ替わりやリズムの噛み合い方等を工夫しています。(荒井亮介)
- 作編曲: 荒井亮介
- 演奏形態: フルートソロ(Fl./Pf. )
- 演奏時間: 5分10秒
- 出版: フォスターミュージック(FME-0609)
- 発売日: 2024/09/05
カルミアの歌|冨田 一樹(入選作品)
題名にあるカルミアは5~6月頃に咲く花で、紫陽花のように小さな花が集まっています。花言葉は「大きな希望」。
このカルミアは花の形状が五角形のように見えることから曲中に5拍子などの奇数の拍子を織り交ぜています。また、拍子感や調性感が曖昧で展開も忙しなく変わりますが、おおよそソナタ形式に沿っています。
この作品はフルート奏者菅野力氏のデビュー10周年を記念して企画された作曲公募のために書き、そのテーマが「旅立ち」や「希望」ということで、短三和音から始まり長三和音で終わる「暗から明」の手法を取り入れています。
伴奏のピアノはハープの書法を参考にしてより軽やかで浮遊感のある楽曲に仕上げました。(冨田一樹)
- 作編曲: 冨田一樹
- 演奏形態: フルートソロ(Fl./Pf. )
- グレード: 5
- 演奏時間: 6分30秒
- 出版: フォスターミュージック(FME-0611)
- 発売日: 2024/09/05
解纜の刻|深渡瀬 丈裕(入選作品)
解纜(かいらん)と読みます。纜(ともづな=船尾にあって船を陸につなぎとめる綱)を解く、という意味です。かなり昔に書いたまま眠らせていた短い旋律があり、それをもとに作品を書き上げたいと以前からずっと頭の片隅で考えていたところ、この公募を目にし、この旋律の纜を解いてみようと、船出や出帆をイメージして作曲しました。
曲は、4つの場面からできています。
「祈り」…旅立つ者、見送る者、どちらも様々な想いを胸に祈り、歌う。
「憂い」…不安や躊躇いと共に、船は少しずつ進み始める。
「決意」…時には強引に迷いを振り払わねばならないこともあるだろう。
「勇気」…祈り、憂い、決意を勇気の糧として、希望を抱き突き進む。
新たな旅立ちには必ずと言って良い程に不安や迷いが付き纏います。この音楽が、旅立ちの心境に、また旅立ちを見送る人の想いに、ほんの少しでも寄り添うことができれば幸いです。(深渡瀬丈裕)
- 作編曲: 深渡瀬丈裕
- 演奏形態: フルートソロ(Fl./Pf. )
- グレード: 3+
- 演奏時間: 6分5秒
- 出版: フォスターミュージック(FME-0612)
- 発売日: 2024/09/05
菅野力フルートリサイタル2024(終了しました)
2024/7/15・月祝 釧路(北海道)公演
- 会場|釧路芸術館
- 開演|14:00
- チケット|3,000円
2024/7/21・日 静岡公演
- 会場|静岡江崎ホール
- 開演|14:00
- チケット|3,500円
2024/8/9・金 札幌(北海道)公演
- 会場|カムオンホール
- 開演|18:45
- チケット|3,000円
2024/8/31・土 豊洲(東京)公演
- 会場|豊洲シビックセンターホール
- 開演|19:00
- チケット|大人・4,000円/学生・2,000円
公募概要(終了しました)
趣旨
年代、経験値を問わずフルート奏者が親しめるフルート作品を発掘し、レパートリーの拡充を目指す
応募資格・応募料
- 資格:日本語でのコミュニケーションができる方
- 応募料:無料
応募規定
テーマは「出発」「旅立ち」「希望」 リサイタル10周年を記念する作品を広く募集します。
- 未発表未出版、オリジナル作品であること
- フルートとピアノのための作品であること(ピッコロ、アルトフルート持ち替え使用可)
- 楽器の特性上、非常に高度な技術を要するパッセージ、困難な音域、特殊な奏法は使用しないこと
- 演奏時間 4~8分以内の作品であること
- 単一楽章作品、組曲は問わない
- 一人あたりの応募作品数は問わない
- 楽譜データがFinaleもしくはSibeliusで制作されたもの
提出物および応募方法
提出物をご確認のうえ、こちらのフォームからのご応募ください
- FinaleもしくはSibeliusから出力されたPDF(作曲者名表記)
- MP3音源(MIDI可)
- 作曲者プロフィール
- 楽曲解説
応募作品は返却いたしません(落選時にデータの消去をいたします)
提出した作品の差し替え・変更はできません
剽窃など第三者の著作権またはその他の権利を侵害する恐れがあると認められた場合には、入賞後でも取り消すことがあります。
募集期間および審査発表
- ご応募期間:2023年11月5日(日) 〜2024年3月31日(日)
※期間内必着、最終日23時59分まで。上記期間外に届いたものは受付いたしません - 結果発表: 2024年4月21日(日)
※審査は非公開で行います。
審査員(敬称略)
- 菅野力、和田直也(作曲家)、下田和輝(作曲家)、榊本真希(フォスターミュージック株式会社)
入賞曲の取扱い
- フォスターミュージック株式会社との著作権譲渡契約を締結し、JASRACの管理楽曲とします。
- 試奏・楽譜制作・収録の段階で、部分的に手直しをお願いする場合があります。
初演予定
- 日程:2024年8月31日(東京公演)
リサイタル当日は、和田直也・下田和輝両氏による委嘱作品も初演されます。 - 会場:豊洲シビックホール
リハーサル日程等入賞者に個別にご連絡いたします。
応募およびお問合せ
※土日・祝日を挟んだ場合およびご質問の内容によっては、回答までに日数がかかる場合がございます。あらかじめご了承ください。
菅野力演奏動画
こちらの動画も参考に、音色や作品のイメージを膨らませてください。
吹奏楽を柱とした音楽出版社として2008年に設立いたしました。 「フォスター」という単語には、育てる・育成するといった意味があり、日本の吹奏楽をもっと元気に楽しく発展させていきたいという思いをこめています。みなさまのブラバンコンシェルジュとして、様々な情報を発信していきます。