ヴィーヴ!サクソフォーン・クヮルテット(Vive! Saxophone Quartet)は、1999年に結成された日本を代表するサクソフォン四重奏団です。グループ名の「ヴィーヴ(Vive!)」はフランス語で「万歳」を意味し、その名の通り4種類のサクソフォン(ソプラノ、アルト、テナー、バリトン)による力強く華やかなアンサンブルを展開しています。
結成以来、20回以上のリサイタルを成功させ、東京・春・音楽祭や軽井沢八月祭など国内各地の音楽祭に出演など、多彩なステージで活躍してきました。結婚式でのブライダル演奏や学校での芸術鑑賞教室にも取り組むなど、クラシック音楽ファンから一般の聴衆まで幅広い層にサクソフォン四重奏の魅力を届けています。
ヴィーヴ!の活動の大きな特徴は新作委嘱(委嘱作品)への積極的な取り組みにあります。毎年開催されているリサイタルでは、気鋭の作曲家に新しいサクソフォン四重奏曲を依頼し、ヴィーヴ!と親交の深い八木澤教司氏ほか、国内外の才能ある作曲家の作品を次々と四重奏レパートリーに迎え入れ、結成以来なんと33曲(2024年現在)もの新作を委嘱初演し、オリジナル作品の拡充に力を注いできました。また、それらの委嘱作品を含むレパートリーを収録した「ブレーン・アンサンブル・コレクション」シリーズなど、CD収録にも力を入れ、新鮮な驚きと多様なサウンドを提供しています。
常に新しいレパートリーに挑戦し創造するカルテットとして音楽愛好家からも評価高い、ヴィーヴ!サクソフォーン・クヮルテットの魅力とそのレパートリーをご紹介します。
ヴィーヴ!サクソフォーン・クヮルテット:メンバー
- ソプラノ・サクソフォン:豊田晃生
Soprano Saxophone : Akio Toyoda - アルト・サクソフォン:荻島良太
Alto Saxophone : Ryota Ogishima - テナー・サクソフォン:鶴飼奈民
Tenor Saxophone : Nami Tsurukai - バリトン・サクソフォン:浅利真
Baritone Saxophone : Makoto Asari
それぞれが国内音楽大学出身の実力派であり、アンサンブルの精緻さと表現力豊かな演奏で知られます。特にバリトンサクソフォン奏者の浅利 真(あさり まこと)氏は、次章で詳述するようにアレンジャー(編曲者)として、ヴィーヴ!のレパートリー開拓の一翼を担っています。
アレンジャー:浅利 真
ヴィーヴ!のバリトンサクソフォン奏者である浅利 真氏は、演奏活動と並行して、クラシックからポップスまで幅広いジャンルの楽曲をサクソフォン四重奏向けにアレンジし、ヴィーヴ!の音楽的支柱となっています。浅利氏の編曲作品はその質の高さと演奏効果の巧みさで定評があり、ブレーンミュージック、フォスターミュージック、CAFUAレコード、アルソ出版などから多数の楽譜が出版されています。
浅利氏のアレンジの特徴は、原曲の魅力を生かしつつサクソフォン四重奏の響きに最適化された緻密なスコアリングにあります。浅利氏自身「ヴィーヴ!」の一員としてこれら編曲を演奏・録音し、メンバーの高度なテクニックと相まって「こんな曲までサックス四重奏で!?」という驚きを提供してくれます。その洒脱な編曲センスと演奏技巧には思わず唸らされることでしょう。
また浅利氏は演奏者・編曲者としての活動に加え、名古屋芸術大学の講師として後進の指導にもあたっています。吹奏楽コンクールやアンサンブルコンテストの審査員も務めるなど、その見識と経験は業界内でも高く評価されています。
ヴィーヴ!サクソフォン・クヮルテット リサイタル Vol.22 〈終演〉

- 日時:2025年6月16日(月)
- 18:30開場
- 19:00開演
- 会場:浜離宮朝日ホール
(都営大江戸線「築地市場駅」(A2出口)すぐ) - 曲目
- 野呂 望:委嘱作品 世界初演
- 田村 修平:委嘱作品 世界初演
- 八木澤 教司:オリーブ畑に吹く風と
- T.エスケッシュ:ル・バル
- 清水 大輔:スーン
- A.ピアソラ:タンゴ・バレエ
〈2025/6/19発売〉スーン~サクソフォン・クヮルテットのために|清水大輔
「開演」「休憩」「終演」という3つの楽章からなる組曲で、コンサートの流れそのものを音楽で描いたユニークな構成です。第3楽章は弦楽四重奏+クラリネット・ピアノのための作品を大幅に改訂したもので、サクソフォンならではの表現が活きる内容となっています。長らく絶版となっていましたが、ついにフォスターミュージックより再版が決定!
- 作編曲: 清水大輔
- 演奏形態: サクソフォン4重奏(S.sax./A.sax./T.sax./B.sax. )
- グレード: 4
- 演奏時間: 7分45秒
- 出版: フォスターミュージック(FME-0630)
- 発売日: 2025/06/19
委嘱作品
フォスターミュージックでは2019年以降の委嘱作品をリリースしています。
ラ・ヴィ・ヴルトェーズ|長生淳(2024)
柔らかく上品なビロードを人生にたとえ、25周年を迎えたヴィーヴ!への敬意を込めて書かれました。3楽章から成り、歌、ハーモニー、リズムそれぞれの魅力を堪能できる作品です。

- 作編曲: 長生淳
- 演奏形態: サクソフォン4重奏(S.sax./A.sax./T.sax./B.sax. )
- グレード: 5
- 演奏時間: 14分0秒
- 出版: フォスターミュージック(FME-0600)
- 発売日: 2024/11/28
ペンデュラム|井澗昌樹(2024)
ペンデュラムとは「振り子」の意味。日々何も変わらないのに、未来の影に怯えてしまう気持ちと、いつ時が止まってもよいと思える安らぎへの憧れ、そんな揺れ動く心を振り子に例えて表現された1曲。

- 作編曲: 井澗昌樹
- 演奏形態: サクソフォン4重奏(S.sax./A.sax./T.sax./B.sax. )
- グレード: 5
- 演奏時間: 6分50秒
- 出版: フォスターミュージック(FME-0599)
- 発売日: 2024/11/28
仮想の月|江原大介(2023)
異なる性格を持つ2楽章からなる組曲。第一楽章「夢想」は、浮遊感とはかなさを、第二楽章「覚醒」は、エネルギーと不安定な響きを表現。調性と無調、夢と覚醒、存在しないのに存在する――そんな世界を描きました。
その美しさのあまり、時に人を惑わす「月」。そんな妖艶な魅力溢れる1曲です。
- 作編曲: 江原大介
- 演奏形態: サクソフォン4重奏(S.sax./A.sax./T.sax./B.sax. )
- 演奏時間: 9分0秒
- 出版: フォスターミュージック(FME-0557)
- 発売日: 2023/07/27
アウト・ザ・ムード|日景貴文(2022)
タイトルから想像されるとおり、インザムードのパロディで、冒頭からクスッとしてしまいます。キュビスムという美術表現にヒントを得て、音楽の3要素をこれらをもっと簡略化することはできないか?という発想からこの曲は生まれました。
旋律を「分散和音、連打、さまざまなスケール」という3つのパターンに簡略化し、再構築したらどうなるか?という試みがなされ、技術的にも高度な内容となっていますが、これからこの曲はどこへ向かうんだろう?というワクワクを感じさせてくれる作品です。
- 作編曲: 日景貴文
- 演奏形態: サクソフォン4重奏(S.sax./A.sax./T.sax./B.sax. )
- グレード: 5
- 演奏時間: 5分0秒
- 出版: フォスターミュージック(FME-0525)
- 発売日: 2022/08/24
プラサ・デ・エスパーニャ|坂井貴祐(2021)
1929年に開催された万国博覧会「イベロ・アメリカ博覧会」の会場として造られたセビリアの「スペイン広場」をめぐる光景にインスピレーションを受けて作曲されました。
全体的にはフラメンコ(中でもブレリアス)からアイデアを得た部分が大きい作品で、主要部分はテンポ180、3/4拍子(または3/4+2/4拍子)で進みます。曲の要所要所ではアルトサックスやソプラノサックスによるカデンツァ風のソロも挿入されており、それも聴きどころのひとつとなっています。
- 作編曲: 坂井貴祐
- 演奏形態: サクソフォン4重奏(S.sax./A.sax./T.sax./B.sax. )
- グレード: 5
- 演奏時間: 4分20秒
- 出版: フォスターミュージック(FME-0496)
- 発売日: 2021/09/16
リリカル・ゴールド|下田和輝(2019)
ある春の日に見た鮮烈な夢──金色に輝く海と星々が降り注ぐ宇宙の光景──に着想を得て制作された作品です。現実では目にすることのない、幻想的な世界の記憶を、サクソフォンの繊細かつ豊かな音色を通して描き出しました。
流麗な旋律と繊細なアンサンブルにより、夢の中でしか体験できない光と静寂の瞬間を再現。色彩豊かな音楽表現と高い演奏技術が要求される、聴き応えのある一作となっています。
- 作編曲: 下田和輝
- 演奏形態: サクソフォン4重奏(S.sax./A.sax./T.sax./B.sax. )
- グレード: 4+
- 演奏時間: 6分0秒
- 出版: フォスターミュージック(FME-0442)
- 発売日: 2019/08/28
パッシオーネ|江原大介(2018)
サクソフォン四重奏ならではの技巧と機動性、音域と音色の広さを追求し、軽快さと力強さをあわせもつ作品を目指して作曲されました。タイトルの通り、情熱溢れる1曲です。スピード感あふれる熱演をお楽しみください!
- 作編曲: 江原大介
- 演奏形態: サクソフォン4重奏(S.sax./A.sax./T.sax./B.sax. )
- グレード: 4
- 演奏時間: 4分30秒
- 出版: フォスターミュージック(FME-0428)
- 発売日: 2019/08/21
悠遠の雪|朴守賢(2017)
雪の持つ静けさと激しさ、その矛盾に満ちた美しさをテーマに据えた意欲作です。その瞬間ごとに異なる表情を見せる雪は、触れた瞬間に消えてしまう儚さを持ちながら、確かにそこに存在する――
確かに触れられないもの、確かに言葉にできないもの、運命の不可思議さ、美しさ、脆さをサクソフォン四重奏という親密な編成に託し、聴く者それぞれの「雪」を心に降らせることを目指しました。
- 作編曲: 朴守賢
- 演奏形態: サクソフォン4重奏(S.sax./A.sax./T.sax./B.sax. )
- グレード: 4+
- 演奏時間: 8分0秒
- 出版: フォスターミュージック(FME-0438)
- 発売日: 2019/08/28
浅利真 アレンジ作品
チェンジ・ザ・ワールド|トミー・シムズ、ゴードン・ケネディ、ウェイン・カークパトリック arr. 浅利真
ワイノナ・ジャッドが歌い、1996年リリースの『Revelations』に収録された名曲「Change the World」。同年エリック・クラプトンがカバーし世界的ヒットを記録しました。
ミディアム・テンポに乗せた切ない想いが心に響く名曲です。

- 作編曲: トミー・シムズ、ゴードン・ケネディ、ウェイン・カークパトリック arr. 浅利真
- 演奏形態: サクソフォン4重奏(S.sax. (opt. A.Sax.)/A.sax./T.sax./B.sax. )
- 演奏時間: 4分0秒
- 出版: フォスターミュージック(FME-0547)
- 発売日: 2023/06/
枯葉|ジョゼフ・コズマ arr. 浅利真
1946年制作のフランス映画『夜の門(Les Portes de la Nuit)』の挿入歌として誕生し、ジョセフ・コズマ(1905〜1969)が作曲したシャンソンのスタンダード。後に多くのミュージシャンがカバーし、今ではジャズのスタンダードナンバーとしても親しまれています。
本アレンジは、テナー・サックスのソロで始まり、アルト→テナー→ソプラノとソロが続きます。バリトン・サックスはソロこそないものの、各所に見せ場があり、バンド全体の魅力を引き立てます。ぜひお気に入りの演奏を探して参考に!

- 作編曲: ジョゼフ・コズマ arr. 浅利真
- 演奏形態: サクソフォン4重奏(S.sax./A.sax./T.sax./B.sax. )
- 演奏時間: 6分0秒
- 出版: フォスターミュージック(FME-0546)
- 発売日: 2023/06/29
スウィングしなけりゃ意味がない|デューク・エリントン arr. 浅利真
ジャズ界に「スウィング」という言葉を広めた伝説のナンバーを、スウィングロック風にアレンジ!クラシックからジャズまでどんな音色でもかっこよく響きます。ドラムやカホンを追加して、さらにパワフルな演奏に。原曲の歌い方を参考にすると、ニュアンスがぐっと深まります。

- 作編曲: デューク・エリントン arr. 浅利真
- 演奏形態: サクソフォン4重奏(S.sax./A.sax./T.sax./B.sax. )
- 演奏時間: 4分10秒
- 出版: フォスターミュージック(FME-0545)
- 発売日: 2023/06/29
いつか王子様が|フランク・チャーチル arr. 浅利真
「街中でどこか遠くから聴こえてくる音をたどっていくと演奏している人たち出会う」というコンセプトでアレンジ。リズムとコードの静かなイントロから、穏やかなメロディ、そして拍子が変わるドラマチックな展開へ。コンサートのオープニングにぴったりです。

- 作編曲: フランク・チャーチル arr. 浅利真
- 演奏形態: サクソフォン4重奏(S.sax./A.sax./T.sax./B.sax. )
- 演奏時間: 3分0秒
- 出版: フォスターミュージック(FME-0544)
- 発売日: 2023/06/29
アルバム
「サクソフォンズ・スタディーズ」ブレーン・アンサンブル・コレクション Vol.1
収録曲
- サクソフォーン・バスカーズ (戸田 顕)
- 東回りの風(織田英子)
- アラベスク第一番 (クロード・ドビュッシー/飯島俊成)
- フォスター・ラプソディー (鈴木英史)
- サクソニック・ダンス (戸田 顕)
- パッション (高橋伸哉)
- グリムの古城 (高橋宏樹)
- サクソフォンズ スタディーズ(菊池幸夫)
- アスキ・カタスキ・ハイクス・テトラクス・ダムナメネウス・アイシオン (八木澤教司)
- 「茶摘み」によるディヴェルティメント (高昌帥)
「イマージュ」ブレーン・アンサンブル・コレクション Vol.7
収録曲
- ペンタグラム (坂井貴祐)
- ソナチネ(飯島俊成)
- もあしび(長生淳)
- イマージュ〜サクソフォーン四重奏のために〜(正門研一)
- キャフェ・サンジェルマン(真島俊夫)
- 春の小径(広瀬勇人)
- ルーマニア民族舞曲(ベラ・バルトーク/黒川圭一)
- 3つのバガテル(八木澤教司)
- ブエノスアイレスの春 (アストル・ピアソラ/黒川圭一)
「セカンド・バトル」ブレーン・アンサンブル・コレクション Vol.13
収録曲
- アリオンの琴歌 (八木澤教司)
- のっぴきならない虹へ 〜サクソフォーン三重奏のための3つの小品〜(福島弘和)
- セカンド・バトル (天野正道)
- 海にまつわる三章(石毛里佳)
- 喜歌劇「メリー・ウィドウ」セレクション (フランツ・レハール/鈴木英史)
- グリーンスリーヴス・ファンタジー (戸田 顕)
- アミューズメント・パーク組曲 (高橋宏樹)
- サクソフォンズ スタディーズ第2番(菊池幸夫)
- リベルタンゴ (ピアソラ/浅利 真)
「アディオス・ノニーノ」ブレーン・アンサンブル・コレクションVol.21
- アリオーソとトッカータ (坂井貴祐)
- ホワイト&ブラック (江原大介)
- コンヴェクション サクソフォーン四重奏のための (中橋愛生)
- ヒア (岩田 学)
- タンゴ・ファンタジー (織茂 学)
- むさしのファンタジア (三澤 慶)
- カルメン幻想曲 (ビゼー/伊藤康英)
- アンダンテとカプリチォ (木下牧子)
- アンティフォナ (福島弘和)
- アディオス・ノニーノ (ピアソラ/浅利 真)
「プラネット・ナイン」ブレーン・アンサンブル・コレクション Vol.28
収録曲
- ボッカ・デラ・ヴェリタ (八木澤教司)
- インスラ・ドゥルカマラ (福島弘和)
- エンパシー (清水大輔)
- サクソフォーン三重奏曲「プリムラ」(加藤大輝)
- プラネット・ナイン (岩田学)
- トリプティーク(露木正登)
- 愁陽の路 (八木澤教司)
- ライオンキング・セレクション (エルトン・ジョン、ハンス・ジマー/浅利真)
- オー・シャンゼリゼ (マイク・ウィルシュ、マイク・ディーガン/浅利真)
サクソフォーン・ダイヴ:清水大輔作品集

Suite for Saxophone Quartet No. 1

Crossover Suite No. 1

まとめ&ヴィーヴ!サクソフォーン・クヮルテット関連楽譜のご紹介
ヴィーヴ!サクソフォーン・クヮルテットは、その20年以上にわたる継続的な活動と意欲的なレパートリー開拓によって、日本のサクソフォンアンサンブル界を牽引してきました。
結成当初から在籍するメンバーたちの息の合ったアンサンブルと、浅利真氏の卓越した編曲術が融合し、生み出される音楽はまさに唯一無二です。クラシックの名曲から親しみやすいポップスまで自在に吹きこなす彼らの演奏は、聴く者すべてを魅了し、サクソフォンの音色が持つ多彩な表情を再発見させてくれます。
音楽愛好家にとっては「次はどんな新作を聴かせてくれるのだろう」という期待を抱かせる存在であり、サクソフォン奏者にとっては「ぜひ演奏してみたいアレンジ譜」の宝庫として頼もしい存在でしょう。
吹奏楽を柱とした音楽出版社として2008年に設立いたしました。 「フォスター」という単語には、育てる・育成するといった意味があり、日本の吹奏楽をもっと元気に楽しく発展させていきたいという思いをこめています。みなさまのブラバンコンシェルジュとして、様々な情報を発信していきます。