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吹奏楽で人気の邦人作曲家によるサックス4重奏作品

一般的にはジャズの印象の強いサックスですが、クラシックのレパートリーも豊富です。特にサクソフォン4重奏はアンサンブルコンテストでも人気が高く毎年名演が生まれています。

今回は吹奏楽でも人気の高い作曲家によるサクソフォンアンサンブルレパートリーをご紹介します。

目次

仮想の月|江原大介

異なる楽想を持つ二楽章形式から成る作品で、それぞれに第一楽章「夢想」、第二楽章「覚醒」という題が付けられています。

1楽章は宙を浮いたような不安定な形で始まります。不明確な調のまま曲が進み、明確なト短調に到達するところから音楽は動き始め、互いの音が密接に結びつき、美しさや儚さ、淡い記憶などを表現しています。

一方2楽章は、軽快で激しさを感じさせる江原氏ならではの疾走感あふれる楽章。爆発的なエネルギーや感情、調性の中にも不安定な響きを用いながら、現実と非現実を彷徨います。

その美しさのあまり、時に人を惑わす「月」。そんな妖艶な魅力溢れる1曲です。

ヴィーヴ!サクソフォン・クヮルテット委嘱作品

  • 作編曲: 江原大介
  • 演奏形態: サクソフォン4重奏(S.sax./A.sax./T.sax./B.sax. )
  • 演奏時間: 9分0秒
  • 出版: フォスターミュージック(FME-0557)
  • 発売日: 2023/07/27

アウト・ザ・ムード|日景貴文

タイトルから想像されるとおり、インザムードのパロディで、冒頭からクスッとしてしまいます。

キュビスムという美術表現にヒントを得て、音楽の3要素をこれらをもっと簡略化することはできないか?という発想からこの曲は生まれました。

旋律を「分散和音、連打、さまざまなスケール」という3つのパターンに簡略化し、再構築したらどうなるか?という試みがなされ、技術的にも高度な内容となっていますが、これからこの曲はどこへ向かうんだろう?というワクワクを感じさせてくれる作品です。

ヴィーヴ!サクソフォン・クヮルテット委嘱作品

  • 作編曲: 日景貴文
  • 演奏形態: サクソフォン4重奏(S.sax./A.sax./T.sax./B.sax. )
  • グレード: 5
  • 演奏時間: 5分0秒
  • 出版: フォスターミュージック(FME-0525)
  • 発売日: 2022/08/24

作家たちの記憶|清水大輔

才能溢れるロシアの大作曲家の人生の岐路がドキュメンタリーテイストで描かれています。誰のどの曲が盛り込まれているかにもご注目♪さまざまな経験を経て書かれた有名な旋律の裏にはいったいどんなドラマがあったのか・・・、是非想像しながら演奏してください。

ハッピー☆マッキーSAXカルテットとピアノの共演による華やかな演奏もお楽しみください。

  • 作編曲: 清水大輔
  • 演奏形態: サクソフォン4重奏(S.sax./A.sax./T.sax./B.sax./Pf. )
  • グレード: 4+
  • 演奏時間: 7分0秒
  • 出版: フォスターミュージック(FME-0499)
  • 発売日: 2021/09/23

ソナチネ第二番~サクソフォン4重奏のための|酒井格

カルテット颯の依頼により書き下ろした酒井氏とって初めてのサクソフォン四重奏曲。

ソナタ形式による中庸なテンポの第一楽章、同じくソナタ形式(但し展開部を持たない)によるゆったりしたテンポの第二楽章、ロンド・ソナタ形式による快活なテンポの第三楽章という、古典派の伝統的なスタイルで書かれた作品ですが、モーリス・ラヴェルのソナチネという作品から着想を得て作曲された、とてもチャーミングな作品です。

それぞれの楽器の魅力を活かすことと、同族楽器ならではの一体的な響きを活かすことが意識され、古典的なサクソフォーン4重奏曲の味わいも感じられる1曲。

2018年3月に、高山市でレコーディングを行い、2018年7月にクロアチアで開催されたワールドサクソフォンコングレスでのコンサートで世界初演されました。

  • I. アレグロ 03:56
  • II. アンダンテ 04:14
  • III. ヴィヴァーチェ 03:17

レグルス|樽屋雅徳

フィグール・サクソフォン・クヮルテットの10周年の委嘱作品。

紀元前のはるか昔から、“ロイヤルスター”に数えられた、獅子座のレグルス。“レグルス”という名前自体がラテン語の“王”に由来する、夜空に燦然と輝く星でもあります。

そんなレグルスをモチーフに樽屋雅徳氏が作曲したのが本作品。

ドラマチックな音楽を得意とする樽屋氏が、本曲で表したレグルスの特徴は3つ。きらめく“輝き”、威風堂々とした“王”のイメージ、そして速い自転から“回転しながら弾丸のように突き進む姿”です。

ソプラノ・アルト・テナー・バリトンがそれぞれ1本ずつと、王道のサックス4重奏です。グレード4で5分ですから、アンサンブルコンテストの曲としてもオススメです。

プラサ・デ・エスパーニャ|坂井貴祐

1929年に開催された万国博覧会「イベロ・アメリカ博覧会」の会場として造られたセビリアの「スペイン広場」をめぐる光景にインスピレーションを受けて作曲されました。

全体的にはフラメンコ(中でもブレリアス)からアイデアを得た部分が大きい作品で、主要部分はテンポ180、3/4拍子(または3/4+2/4拍子)で進みます。曲の要所要所ではアルトサックスやソプラノサックスによるカデンツァ風のソロも挿入されており、それも聴きどころのひとつとなっています。

「ペンタグラム」(2007年)、「アリオーソとトッカータ」(2012年) に続く、ヴィーヴ!サクソフォン・クヮルテットからの委嘱作品第3弾として2021年3月に作曲。2021年6月16日、委嘱団体により東京文化会館小ホールにて初演されました。ライブ音源も必聴です。

  • 作曲: 坂井貴祐
  • 演奏形態: サクソフォン4重奏(S.sax./A.sax./T.sax./B.sax. )
  • グレード: 5
  • 演奏時間: 4分20秒
  • FME-0496(フォスターミュージック)
  • 発売日: 2021/09/16

下町小景|追榮祥

下町で人々が賑わう印象をサキソフォンカルテットの小品というかたちで表現しました。

下町に暮らす人々のにぎにぎとした活気、商店街や路地裏に垣間見れる歴史の厚み、そういった質素であるが、味わい深い風情が描かれた、温かい作品です。

  • 作曲: 追榮祥
  • 演奏形態: サクソフォン4重奏(S.sax./A.sax./T.sax./B.sax. )
  • グレード: 4
  • 演奏時間: 6分50秒
  • FME-0494(フォスターミュージック)
  • 発売日: 2021/07/21

ハッピー・ジャミー・スマイリー!|野呂望

「Jammy Quartet」というサクソフォンカルテットの委嘱により、2015年に作曲。

メンバーの和やかな人柄と、そこから彩られる鮮やかな音色に着想を得て、とある休日の晴れやかな午後に、鼻歌を歌いながら陽気に散歩をするようなイメージの可愛らしいテイストに仕上げました。

16beat bounceは、意外と触れる機会の多くない音楽かもしれません。まずは歌ってみたりなどして、少しずつこの特徴的なリズム感に慣れていくように練習をしてみるといいのではないかと思います。お好みでパーカッションを付け足してみるのもいいかもしれません。演奏会でのレパートリーなどとして、ぜひチャレンジしてみてください。

  • 作曲: 野呂望
  • 演奏形態: サクソフォン4重奏(S.sax./A.sax./T.sax./B.sax. )
  • 演奏時間: 4分0秒
  • FME-0475(フォスターミュージック)
  • 発売日: 2021/01/14

チャラサックス|山本哲也

複雑なメロディーや不協和なハーモニーがあったとしても、リズム面において明確なビートや引き込まれるグルーブ感さえあれば、抵抗なく聴けるのではないか?という発想から、この作品は生まれました。

メインテーマは回帰するたびに違う調に着地し、それぞれ異なる色彩や変化が加えられ、独特の不安定さを醸し出していますが、ポップスの要素が強く、全体的には肩の力を抜いて聞ける作品です。

一見変わったタイトルのこの作品、「チャラ」とはなんなのか、グリーンレイ・サクソフォーンカルテットによるエピソードトークもぜひ併せてお楽しみください。

  • 作編曲: 山本哲也
  • 演奏形態: サクソフォン4重奏(S.sax./A.sax./T.sax./B.sax. )
  • グレード: 4+
  • 演奏時間: 6分20秒
  • 出版: フォスターミュージック(FME-0434)
  • 発売日: 2019/08/21

宝船奇想曲|福田洋介

第一:1.恵比寿 2.寿老人 3.大黒天

江古田サックス祭委嘱作で、七福神の組曲として、2011年の江古田サックス祭で演奏されました。第1から第3まで通すと30分を超える大作ですが、組み合わせによってはコンテストにも使用できます。

第一に収録されているのは、恵比寿・寿老人・大黒天の3人の神様です。トップバッターは唯一の日本の神様、恵比寿。“商売繁盛で笹持ってこい”とにぎやかなはやし言葉で知られる恵比寿の曲は、「遊ぶように」とサブタイトルが付けられ、どことなく日本のわらべうたに似たメロディーが奏でられます。

続く寿老人は、1500年も生きた仙人ともいわれ、長寿の象徴の牡鹿を従え、知恵を表す巻物を持っています。知恵と長寿の神が語りかけるように、サックスがゆっくりと語りかける曲です。

そして、恵比寿とともに商売繁盛の神として祀られる大黒天。打ち出の小槌を持ち、米俵の上に乗る姿は、商売繁盛や立身出世の神様としてよく知られますが、おおもとは仏教の守護神、戦いの神でした。それに由来して、リズムの変化に富んだダイナミックな力強さと、インドに由来するメロディーが奏でられます。

第二:1.毘沙門天 2.福禄寿

続いて登場する神さまは「毘沙門天」と「福禄寿」。

中国では武神・守護神とされていた毘沙門天。その静かな闘士が現実となったとき…というストーリー仕立てのコンテンポラリーな音楽です。

幸福=子宝、封禄=財産、長寿=健康の三徳の神、福禄寿は、背が低く長頭で長い髭をはやし、その姿はユーモラスでありながら人徳の表れでもあります。行進曲風の表情で不思議ながら理知的なメロディのコミカルな音楽です。

第三:1.弁才天 2.布袋

宝船奇想曲の最終章で、2015年の江古田サックス祭で演奏されました。第3章の神様は、七福神唯一の女神である弁財天と、唯一の実在人物である布袋。

蛇を従える弁財天は、もともとは水の神様でした。しかし、大きな琵琶を持っているところから、“諸芸能上達の神”として信仰を集めるようになっています。弁天を象徴する琵琶の荘厳なメロディーをサックスで表現したのが、このパートです。

七福神の最後を締める布袋は、ぽってりと膨らんだお腹をして、衣をざっくりと着て大きな袋を背負って笑う、見るからにユーモラスな神様。大きな袋に身の回りのものや布施を入れて放浪し「笑って一生を暮らせ」という教えを説いたとか。布袋の言動そのままに、ゆったりとダイナミックで、笑い声が響くメロディーに仕上がっています。

フィグール・サクソフォン・クヮルテット「宝船奇想曲」

最後に、サックスアンサンブルのCDをご紹介します。サックスアンサンブルとして精力的に活動するフィグール・サクソフォン・クヮルテット。その10周年の記念CDとして2015年の末に販売されました。

福田洋介氏・金山徹氏・啼鵬氏の3人の12曲を収録。中でも福田氏の七福神をモチーフにした「宝船奇想曲」はタイトルになっており、七福神すべてが揃っています。

宝船奇想曲は、第一から第三にそれぞれ順番に作曲されていますが、このCDではそれぞれを一つの曲とし、構成を考えて自由に並べています。コンテストのための音源確認はもちろん、楽しむためのCDとしてもオススメの1枚です。

まとめ

サックスの人あるあるな気がするのですが、「サックスやってます」っていうと8割以上の確率で「カッコイイ!」って言われませんか?その次に「ジャズとか?」と聞かれる・・・。

私自身、小学校からサックスを吹いてきて、このやり取りが繰り返されるたびに<ジャズ吹けないコンプレックス>に苛まれてきました。サックスを吹いている以上、ジャズが吹けないとサックス吹けますって言っちゃダメなんじゃないか的な気持ちになるのです。

せっかく「カッコイイ」って言ってくれた人のご期待に沿えないんじゃないかと感じた結果、「いえいえそんなカッコイイ感じじゃないんです」と返してしまい、なぜ私はクラシックサックスの素晴らしさをちゃんと伝えられないんだ!とダブルで残念な気持ちになってしまうのです。ダメな私・・・

ここで声を大にして言いたい!私はクラシックサックスが大好きだーーー!ふぅ、スッキリ。少々取り乱しました、失礼しました。

クラシックのサックスを聴いてもらうのだけでも少々ハードルが高いのに、邦人のさらにオリジナルなんてマニア過ぎると思われるかもしれませんが、音楽的にも変化に富んで飽きずに楽しんでいただけると思うので、ぜひこの機会に聞いてみてください。

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