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アンサンブルで名曲に親しもう!金管編

金管アンサンブルの魅力は、なんと言ってもその華やかさ。音の立ち上がりの鮮やかさ、輝きのあるハーモニー、そして圧倒的な存在感は、聴く人の心を一瞬で惹きつけます。

本特集では、そんな金管楽器の魅力を存分に活かせる名曲たちのアレンジを、編成別でご紹介します。コンテストにもお使いいただけるよう、5分前後の作品を中心にピックアップしました。

「曲選びに迷う…」「演奏会で映える一曲が欲しい!」そんなときにも、きっとぴったりの作品が見つかるはず。仲間とともに、金管アンサンブルならではの響きを楽しんでください。

目次

トランペットアンサンブル

喜歌劇《軽騎兵》序曲(トランペット7-8重奏)|スッペ arr. 井澗昌樹

「有名なトランペットの旋律といえば?」という問いがあれば、間違いなく上位に挙がるであろう、スッペの《軽騎兵》序曲。その鮮烈な冒頭から始まる華やかなファンファーレと流麗なメロディは、聴く人の心を一瞬で掴み、何度演奏しても胸が躍る名曲です。
2013年にいずみホール(大阪)で開催された「トランペットの魅力、大集合!!」と題されたコンサートのために編曲されたもの。前半はNHK交響楽団首席奏者・菊本和昭氏のソロ、後半は氏が所属する京都トランペットグループ「Summer Breeze」のアンサンブルという豪華二部構成。そのフィナーレを飾るのにふさわしい作品として、この《軽騎兵》序曲が選ばれたのは必然だったと言えるでしょう。

編曲は原曲に忠実でありながら、アンサンブルとしての演奏効果を最大限に引き出すべく、内在するハーモニーをさりげなく補完。華やかさだけでなく、構成の明確さや音楽の推進力にも配慮。編成は8重奏(ピッコロトランペット、トランペット1〜5、フリューゲルホルン2)ですが、5番奏者不在でも演奏可能なように配慮されており、小音符で代替パートが記されています。

細かい音の揃い方やリズムのキレ、フレーズの受け渡しなど、合奏力が問われる場面も多いですが、それだけに全員の息が合ったときの達成感は格別。トランペットならではの華やかさをホールいっぱいに響かせてください。

※金管8重奏(Trp. 1 / doub. Pic.Trp./Trp. 2/Hr. 1/Hr. 2/Trb. 1/Trb. 2/Eup./Tuba )版もあります。

  • 演奏形態: トランペット8重奏(Pic. Trp./Trp. 1/Trp. 2/Trp. 3/Trp. 4/Trp. 5*/Flgh. 1/Flgh. 2 )
  • グレード: 4
  • 演奏時間: 5分0秒
  • 出版: フォスターミュージック(FME-0520)
  • 発売日: 2022/07/06

ホルンアンサンブル

アダージョ~「とぅばらーま」の主題による|福島弘和[ホルンソロ&ピアノ]

ホルン奏者・井手詩朗氏が沖縄県立コザ高等学校との共演の際に、「沖縄の民謡を題材にしたアンコールピースを」と委嘱したことから生まれた、ホルンと吹奏楽(※本譜はピアノ伴奏版)のための抒情的な一曲です。作曲は、豊かな詩情と構築力で定評のある福島弘和氏。

主題となっている「とぅばらーま」は、沖縄県八重山地方に伝わる民謡で、深い情感とゆるやかな旋律が特徴。恋愛や人生の想いを歌うこの歌は、ゆったりとしたテンポの中に、切なさとあたたかさが交錯する、非常に美しいメロディを持っています。

冒頭のピアノは、三線の伴奏を模した音型で始まり、そこにホルンが静かに歌い出します。まるで南の島の夜風に乗って聴こえてくるような響きが広がり、旋律のひとつひとつが心に語りかけてくるようです。

ホルンという楽器が持つ柔らかさと深さ、そして遠くを見つめるような音色が、この民謡の旋律と絶妙に重なり合い、聴く人の胸に静かに残る音楽となっています。

演奏会のアンコールや小編成の演目として、または「歌うように吹く」練習にも最適な一曲。沖縄の風景や心の奥にある感情に思いを寄せながら、大切に演奏したくなる作品です。

YouTubeで公開されている福川伸陽氏の素晴らしい演奏もぜひ聞いてみてくださいね。

  • 作編曲: 福島弘和
  • 演奏形態: ホルンソロ(Hr./Pf. )
  • グレード: 3
  • 演奏時間: 6分16秒
  • 出版: フォスターミュージック(FME-0357)
  • 発売日: 2017/03/10

トロンボーンアンサンブル

滝廉太郎の3つの歌 (花〜荒城の月〜箱根八里)|滝(瀧)廉太郎 / arr. 井澗昌樹[トロンボーン4重奏]

滝廉太郎は明治期を代表する作曲家であり、日本の西洋音楽黎明期において重要な役割を果たしました。その作品は、和の情緒と西洋音楽の技法が自然に溶け合い、日本の音楽文化に新たな流れをもたらしました。しかし、わずか23歳という若さでこの世を去った彼が、もし長く生きていたら──と思わずにいられないほど、その才能は群を抜いていました。

本作は、そんな滝廉太郎の名旋律を現代のアンサンブルでよみがえらせたアレンジです。三曲は流れるように繋がれ、それぞれの曲想が自然に展開していきます。途中には「荒城の月」から着想を得た自由な楽想のインタールードが挿入され、情景が移り変わるような構成になっています。技術的あるいは時間的な制約がある場合、このインタールード部分はカット可能ですが、可能であればぜひ演奏に取り入れて、作品の持つ深みを感じてほしいところです。

編成は柔軟に対応可能で、学校現場でも取り組みやすく、コンテストや演奏会でも映える一曲。日本の歌曲の美しさを再認識できるだけでなく、アンサンブルとしての音楽づくりや表現力の向上にもつながる、味わい深いレパートリーです。

  • 演奏形態: トロンボーン4重奏(Trb. 1/Trb. 2/Trb. 3/Bs.Trb. )
  • グレード: 3+
  • 演奏時間: 5分0秒
  • 出版: フォスターミュージック(FME-0192)
  • 発売日: 2012/08/22

ふるさとのうた~4本のトロンボーンのための|高嶋圭子[トロンボーン4重奏]

2004年に来日したフランスのミリエール・トロンボーン四重奏団のために書かれた《FURUSATO》をもとに、2011年、鳥取県のトロンボーン四重奏団「アンサンブルSHADE」のために新たに生まれ変わった作品です。

冒頭に登場するのは、唱歌「ふるさと」のモティーフ。そこから物語が始まり、四季をめぐるように音楽が展開していきます。《春が来た》、《海》、《村まつり》、《冬景色》と、世代を超えて歌い継がれてきた日本の唱歌が次々に登場。それぞれの季節の風景が、トロンボーンのあたたかな音色とともに描かれていきます。そして、曲の終盤でふたたび現れる「ふるさと」の変奏。メロディがより深く、心に染み入る響きとなって帰ってきます。

各楽器の役割が繊細に設計されており、演奏者にとっては、各旋律の内に秘められた「主題」に耳を澄ませながら、豊かなフレーズ感で表現することが求められる作品。季節のうつろいや、ふるさとへの想いを音にのせて丁寧に演奏したい一曲です。

コンサートはもちろん、文化的・教育的な意義のあるプログラムとしてもおすすめできる、トロンボーン四重奏の珠玉のレパートリーです。

  • 作編曲: 高嶋圭子
  • 演奏形態: トロンボーン4重奏(Trb. 1/Trb. 2/Trb. 3/Bs.Trb. )
  • グレード: 4
  • 演奏時間: 5分0秒
  • 出版: フォスターミュージック(FME-0310)
  • 発売日: 2015/11/19


さくら変奏曲|成田為三 arr. 佐川馨[トロンボーン4重奏]

成田為三は、秋田県出身の作曲家。教育現場から音楽の道に転じ、東京音楽学校で山田耕筰に師事したのち、ドイツでも4年間にわたり作曲を学んだ実力派です。唱歌・童謡の作曲家としての印象が強いものの、実際にはオーケストラやピアノ作品など、幅広いジャンルで高い創作力を発揮していました。

この《さくら変奏曲》は、日本古謡「さくらさくら」の旋律を主題としたピアノ独奏曲で、9つの変奏とコーダから成る作品。作曲年代は不詳ですが、昭和17〜18年に出版された他の変奏曲と近い時期と推定されます。和の情緒と西洋的な変奏技法が融合した、美しく繊細な楽想が印象的です。

今回のアレンジでは、トロンボーンの特性を活かしながら、原曲の構造を抜粋・再構成。箏の「手事」を思わせる細やかな音型や、静謐な空気感もトロンボーンならではの柔らかさと厚みで描き出され、まったく新たな魅力を放っています。変奏曲としての構成美や音楽的展開も楽しめる本作は、アンサンブルの技術だけでなく、表現力・音色のコントロールといった面でも学びの多い作品です。

伝統的なメロディを素材に、じっくりと音楽の流れを味わいながら演奏する、しっとりとした一曲。演奏会やコンテストでも、ひと味違った印象を残すレパートリーとしておすすめです。

  • 作編曲: 成田為三 arr. 佐川馨
  • 演奏形態: トロンボーン4重奏(Trb. 1/Trb. 2/Trb. 3/Bs.Trb.)
  • グレード: 4
  • 演奏時間: 4分0秒
  • 出版: フォスターミュージック(FME-0515)
  • 発売日: 2021/12/02

バリテューバアンサンブル

カルメン組曲|ビゼー, G / arr. 和田信[バリテューバ4重奏]

ビゼーの代表作《カルメン》は、フランスの作家メリメの小説を原作とし、アンリ・メイヤックとリュドヴィク・アレヴィによって脚本化されたオペラ作品。1875年の初演当初こそ賛否両論を巻き起こしましたが、今では世界中で最も上演されているオペラのひとつとして知られ、「音楽で語る愛憎劇」の代表作とも言えるでしょう。

そんな名作オペラの中から「アラゴネーズ」「アルカラの竜騎兵」「間奏曲」「ジプシーの踊り」の4曲を抜粋し、約10分に再構成されたアレンジ作品です。原作の魅力を損なわず、場面ごとの性格や色彩感がしっかりと描き分けられており、演奏者の音楽的表現力が問われる内容になっています。

華やかでリズミカルな舞曲、しっとりと情感豊かに歌う場面、そして情熱的なクライマックス。どの場面でもアンサンブルの呼吸と音色のコントロールが大切で、それぞれのキャラクターが音楽を通して生き生きと浮かび上がるような演奏を目指したい作品です。

聴きごたえ・演奏しごたえともに抜群。アンサンブルコンテストやコンサートの目玉として、ぜひ“カルメンの世界”を鮮やかに描き出してください。

  • 作編曲: ジョルジュ・ビゼー arr. 和田信
  • 演奏形態: バリ・テューバ4重奏(Eup. 1/Eup. 2/Tuba 1/Tuba 2 )
  • グレード: 4
  • 演奏時間: 10分0秒
  • 出版: フォスターミュージック(FME-0004)
  • 発売日: 2008/10/10

金管アンサンブル


ピアノ・ソナタ第8番『悲愴』第2楽章|ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン arr. 井澗昌樹[金管5重奏]

《悲愴》は、ベートーヴェンの初期の代表作のひとつ。特に第1楽章のドラマティックな序奏と緊迫感のある展開は広く知られていますが、この第2楽章には全く異なる表情が宿っています。

穏やかで優しく、どこか慰めのような雰囲気に包まれた旋律。悲しみそのものというよりも、「悲しみを受け入れ、愛おしむような音楽」ともいえるこの楽章は、多くの人の心に静かに寄り添ってくれる一曲です。ドラマ『のだめカンタービレ』で使用されたこともあり、クラシックに馴染みのない人にも知られる存在となりました。

このアレンジは、NHK交響楽団のメンバーによって初演された編成をもとに構成されています。ベースパートにはバストロンボーンを想定して書かれていますが、チューバでも演奏可能。また、2番トランペットはフリューゲルホルンでも演奏できるよう配慮されています。金管五重奏を基本に、アンサンブルのメンバー構成に応じて柔軟に対応できるのも大きな魅力です。

表現の鍵は“音の丸さ”と“息づかい”。音を張りすぎず、内声や低音パートとのバランスを意識することで、この曲の静かな深みが一層際立ちます。「響き」で表情を伝える、そんな金管アンサンブルならではの表現を追求したくなる作品です。

コンテストや演奏会の中で、ひとときの安らぎを与えるようなプログラムとして、心からおすすめできるアレンジです。

  • 作編曲: ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン arr. 井澗昌樹
  • 演奏形態: 金管5重奏(Trp. 1/Trp. 2 (or Flgh.)/Hr./Trb./Bs.Trb. (or Tuba) )
  • 演奏時間: 3分20秒
  • 出版: フォスターミュージック(FME-0590)
  • 発売日: 2024/05/22

ダウランド組曲|ジョン・ダウランド arr. 足立正[金管8重奏]

エリザベス朝時代のイギリスで活躍した作曲家・リュート奏者、ジョン・ダウランド(1563–1626)は、現代で言えば“シンガーソングライターの先駆け”とも呼ばれる存在。宗教的ではない世俗的な内容の歌曲を数多く残し、当時のヨーロッパで一世を風靡しました。彼の作品は400年以上の時を超えて、今もなお高い人気を誇ります。

この《ダウランド組曲》では、彼の代表的な3曲を抜粋し、アンサンブル編成で親しめるよう再構成。「Fine knacks for ladies(ご婦人用の見事な細工物)」は、明るく軽快な行商人の歌で、リズム感や音の受け渡しに楽しさが詰まった一曲です。

続く「Flow my tears(流れよ、わが涙)」は、ダウランドの代表作ともいえる名曲。深い悲しみをたたえた旋律ですが、この組曲では間奏曲的に短く挿入されており、曲の流れに豊かな陰影を与えています。

そして3曲目の「Can she excuse my wrongs(あのひとは言い訳できるのか)」は、失恋をテーマにした切ない歌ながら、リズムのノリやハーモニーがどこか現代的。時代を超えた共感を呼ぶ一曲として、音楽的な表現の幅を広げてくれます。

全体として、技術的に無理のないアレンジが施されており、古楽の世界に初めて触れる演奏者にもぴったり。16世紀の音楽を身近に感じながら、アンサンブルの基礎や様式感を学べる教材としても優れた内容です。

中世〜バロックへの入り口として、または本番での変化球レパートリーとしても活用できる、風格と遊び心を兼ね備えた作品です。

  • 作編曲: ジョン・ダウランド arr. 足立正
  • 演奏形態: 金管8重奏(Trp. 1/Trp. 2/Trp. 3 (change to Low Tom)/Hr./Trb. 1/Trb. 2/Eup. (or Trb. 3)/Tuba )
  • グレード: 3
  • 演奏時間: 4分10秒
  • 出版: フォスターミュージック(FME-0189)
  • 発売日: 2012/08/22
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