吹奏楽コンクールで各バンドの個性が表れる「自由曲」。自分たちの持ち味を存分に発揮できる曲を選ぶことが何よりも大事ですが、数多ある楽曲からどれを選ぶかなかなか大変…。誰かポイントやコツを教えて!という声に、全国の名門吹奏楽部・吹奏楽団の指導者がお応えします。
福岡工業大学附属城東高等学校吹奏楽部を率いて全日本吹奏楽コンクール金賞を受賞。2018年度をもって同校を退職、現在は吹奏楽指導者としてご活躍中の武田邦彦先生が、コンクール自由曲ベストアルバムに収録された楽曲の魅力を解説、レベル別に選曲指南。
ぜひ参考にしてあなたのバンドにピッタリの自由曲を見つけてくださいね。
ナビゲーター|武田邦彦
北九州市門司区出身。作陽音楽大学声楽科卒業。
教員になって3校目の勤務校である福岡教育大学附属小倉中学校より吹奏楽の指導に携わり、同校ならびに北九州市立沼中学校を率いて全国大会の出場を果たす。また、合唱コンクールでも全国大会出場。
その功績が認められ、市・県の音楽教育研究会の事務局長ならびに九州地区の総務局長として地元の音楽教育の発展に大きく貢献した。2004年より教育委員会の指導主事に抜擢され学校教育全般にかかわる行政職に従事した。
その後、教育委員会を依願退職し、2006年福岡工業大学附属城東高校の音楽科教諭として赴任。翌年より吹奏楽部の指導を屋比久勲先生より引き継ぎ、全日本吹奏楽コンクール出場並びに、全日本高等学校選抜吹奏楽大会出場。
現在、吹奏楽部の演奏指導および講習会の講師として後進の指導に当たっている。
コンクール自由曲ベストアルバム6「無辜の祈り」
2014年発売『コンクール自由曲ベストアルバム6』収録の全曲を、フル音源と武田先生による選曲アドバイスをコメントと共にご紹介します。各楽曲ごとのイメージワードや特長から気になるものがあれば、是非を聴いて選曲候補にしてくださいね。
- 演奏: 海上自衛隊東京音楽隊 ( Japan Maritime Self-Defense Force Band,Tokyo.)
- 指揮: 河邊一彦 (Kazuhiko Kawabe), 加養浩幸 (Hiroyuki Kayo)
- FMCD-0006(フォスターミュージック)
- 発売日: 2014/03/06
収録曲全曲解説
夢への冒険|福島弘和
この曲の説得力は凄いものがあります。それはまるで物語の筋道を立てて淡々と語りかけているようです。中間部からは曲調がリズミカルになり、ウキウキした気分にさせてくれます。中学生の吹奏楽部員たちが目を輝かせてこの曲を演奏している姿が目に浮かびます。
- 作曲: 福島弘和 (Hirokazu Fukushima)
- 演奏形態: 吹奏楽小編成(24人〜)
- グレード: 3
- 演奏時間: 7分0秒
- FML-0007(フォスターミュージック)
「白鳥の湖」によるパラフレーズ|チャイコフスキー, P arr. 井澗昌樹
白鳥の湖の有名なフレーズがこの曲のいたるところに登場してきます。次はどのフレーズがどんな形で現れるのだろうかとワクワクしながら聴くことができます。また和音進行が変わるだけで、同じメロディでもこんなにも印象が変わるんだとつくづくアレンジの力の偉大を感じさせられる曲です。
- 作曲: ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー (Peter Ilyich Tchaikovsky)
- 編曲: 井澗昌樹(Itani Masaki)
演奏形態: 吹奏楽中編成(41人〜) - グレード: 4
- 演奏時間: 8分30秒
- FMP-0045(フォスターミュージック)
- 発売日: 2013/05/29
序曲「アエターティス・ノワエ」|久保太郎
演奏グレードは低めに設定され、楽器をはじめたばかりの初心者が楽しんで演奏に臨めるように配慮された曲です。でも聴く限りそんなことは微塵も感じさせないゴージャスな響きがします。この曲も、リズムに乗って生き生きと演奏する中学生たちの姿が目に浮かんできます。
- 作曲: 久保太郎 (Taro Kubo)
- 演奏形態: 吹奏楽小編成(24人〜)
- グレード: 2+
- 演奏時間: 6分31秒
- FML-0114(フォスターミュージック)
- 発売日: 2014/03/06
風の渡る丘~吹奏楽のための|中橋愛生
この曲は部員(団員)と指揮者が覚悟を決めて練習に取り掛かる必要がある曲です。そうすれば、他に類を見ない幻想的で魅惑的な音楽の世界に入ることができます。どの不協和音一つとってみても、とても美しい響きがします。それが中橋先生の作られる曲の特徴です。
- 作曲: 中橋愛生 (Yoshio Nakahashi)
- 演奏形態: 吹奏楽中編成(42人〜)
- グレード: 4
- 演奏時間: 7分40秒
- FML-0119(フォスターミュージック)
- 発売日: 2014/03/13
ひまわり|福島弘和
曲の解説を読んで、作曲の経緯と曲名の意味を知りました。運命とは時に無常で、人の命は儚く、また人のやさしさや思いやりは美しく、後の世に続く。曲は派手さはありませんが、解説を読んでこの曲を聴くと胸が熱くなります。
- 作曲: 福島弘和 (Hirokazu Fukushima)
- 演奏形態: 吹奏楽小編成(24人〜)
- グレード: 3
- 演奏時間: 7分4秒
- FML-0116(フォスターミュージック)
- 発売日: 2014/03/06
《地球》~『トルヴェールの惑星』より|長生淳
元は世界トップレベルのサキソフォン四重奏団の為に書かれた曲です。そのトルヴェール・カルテットの音楽性と驚異的なテクニックは高い評価を得ています。それが吹奏楽用に編曲された楽曲ですが、ホルストの組曲「惑星」のフレーズが色々と形を変えて随所に現れます。とても魅力的な作品であると同時に実際の演奏に至るまでにはそれ相当の音楽性と技術が必要となることでしょう。
- 作曲: 長生淳 (Jun Nagao)
- 演奏形態: 吹奏楽中編成(30人〜)
- グレード: 4+
- 演奏時間: 7分15秒
- FML-0121(フォスターミュージック)
- 発売日: 2014/03/20
三文オペラ(小さな三文音楽)|ヴァイル, K arr. 加養浩幸
独特の世界観を持った楽曲です。曲の成り立ちやあらすじを読まれて取り組まれるとよりこの楽曲のよさがわかるのではないかと思います。音の数が少ないだけに一音一音の重みがあり、とても印象に残る曲です。
- 作曲: クルト・ヴァイル (Kurt Weill)
- 編曲: 加養浩幸(Kayo Hiroyuki)
- 演奏形態: 吹奏楽小編成(18人〜)
- グレード: 3
- 演奏時間: 5分53秒
- FML-0122(フォスターミュージック)
- 発売日: 2014/03/20
青葉のころに|河邊一彦
とてもお洒落で上品な作品です。どの年代の人が演奏しても、心が弾みウキウキするのではないでしょうか。コンクールでも演奏会でも効果的な曲であると思います。指揮をしていても楽しい曲だと思います。
- 作曲: 河邊一彦 (Kazuhiko Kawabe)
- 演奏形態: 吹奏楽中編成(38人〜)
- グレード: 4
- 演奏時間: 8分21秒
- FML-0118(フォスターミュージック)
- 発売日: 2014/03/06
無辜の祈り|樽屋雅徳
樽屋氏が東日本大震災の復興の願いを込められて作られた*三曲の中の一曲。私が以前勤めていた吹奏楽部では、三回レンタルをして演奏させていただきました。一回目は私が、二回目、三回目は部員たちのリクエストにより演奏させていただきました。「何度演奏しても、いい曲はいい!」そのたびごとに純粋にそう感じさせてくれた素晴らしい楽曲です。そして何度も演奏して東日本大震災を過去の事と風化させないようにしなければいけないと思います。
*月下に浮かぶひとすじの道標~3.11 超克の祈り~
*ラ・スペランツァ
- 作曲: 樽屋雅徳 (Masanori Taruya)
- 演奏形態: 吹奏楽中編成(33人〜)
- グレード: 4
- 演奏時間: 7分3秒
- FML-0120(フォスターミュージック)
- 発売日: 2014/03/06
「交響曲第5番」より第1楽章|マーラー, G arr. 瀧山智宏
この曲を聴くとシカゴ交響楽団とトランペット奏者のアドルフ・ハーセスが脳裏に浮かびます。私がシカゴ・ミッドウェストバンドクリニックに参加した折に、加養先生にシカゴ交響楽団のコンサートに連れて行っていただきました。痛く感動し、そこでお土産に買ったDVDが「交響曲第5番」でした。それからシカゴ交響楽団の虜になってしまいました。そんな思い出の曲です。
- 作曲: グスタフ・マーラー (Gustav Mahler)
- 編曲: 瀧山智宏(Takiyama Tomohiro)
- 演奏形態: 吹奏楽中編成(43人〜)
- グレード: 5+
- 演奏時間: 12分12秒
- FML-0123(フォスターミュージック)
- 発売日: 2014/03/20
レベル別オススメ作品
タイトル | 中学校 | 高校以上 |
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夢への冒険 | ◎ | ○ |
「白鳥の湖」によるパラフレーズ | ○ | |
序曲「アエターティス・ノワエ」 | ○ | |
風の渡る丘~吹奏楽のための | ◎ | |
ひまわり | ○ | ○ |
《地球》~『トルヴェールの惑星』より | ◎ | |
三文オペラ(小さな三文音楽) | ○ | ○ |
青葉のころに | ○ | ○ |
無辜の祈り | ◎ | ◎ |
「交響曲第5番」より第1楽章 | ◎ |
吹奏楽を柱とした音楽出版社として2008年に設立いたしました。 「フォスター」という単語には、育てる・育成するといった意味があり、日本の吹奏楽をもっと元気に楽しく発展させていきたいという思いをこめています。みなさまのブラバンコンシェルジュとして、様々な情報を発信していきます。