吹奏楽に携わる人なら、ヤン・ファン・デル・ロースト氏の作品とどこかで関わっているでしょう。このたび、氏の生誕60年を記念してCDアルバムが発売されました。その中からおすすめの楽曲をピックアップします。
その前に、彼の呼び名について、日本ではヴァン・デル・ローストと呼ぶ方が圧倒的にメジャーだと思いますが、ファン・デル・ローストという表記で統一しております。ファン・デル・ロースト氏自身も、ラジオパーソナリティの西田裕氏のホームページで「名前を間違えないで!」と訴えているので、この機会にぜひヴァン→ファンへチェンジしていただけたらと思います。
ヤン・ヴァンデルロースト「マイルストーンズ」 リミティッド・アニヴァーサリー・エディション
ヤン・ファン・デル・ロースト60年の歩み
ドラマティックでダイナミックな曲が多い、ヤン・ファン・デル・ロースト氏。
弟子の広瀬勇人は「多忙ながら家族との時間を何よりも大切にし、関わる人すべてに誠意を持って接する。作曲する作品には、日常生活の情緒豊かさがそのまま表れている」と師のヤン・ファン・デル・ローストを語っています。
今回発売のCDは、ただ音楽を集めたものではなく、日常を含め歩んだ道を自らまとめた自伝と、それに沿って思い入れの深い音楽を年代順に収録したもの。ヤン・ファン・デル・ローストの60年の歩みダイジェストともいえるCDです。
※ここで一つのギモンが。このジャケットにはハッキリ「ヴァンデルロースト」と書いてあるんですよね。これはファン・デル・ロースト氏が容認したのでしょうか・・・。タイトル表記のみジャケットに踏襲することにしました。
[吹奏楽-CD] ヤン・ヴァンデルロースト「マイルストーンズ」 リミティッド・アニヴァーサリー・エディション: MILESTONES: LIMITED ANNIVERSARY EDITIONS |
Disc1
- プロヴァンス組曲:天使が叫んだ
Suite Provencale: Un ange a la fa crido
[01:17] / G.3 - プロヴァンス組曲:アダムと連れ合い
Suite Provencale: Adam e sa Coumpagno
[02:02] / G.3 - プロヴァンス組曲:屋根拭き職人
Suite Provencale: Lou Fustie
[01:11] / G.3 - プロヴァンス組曲:ほうき
Suite Provencale: Lis Escoubo
[02:47] / G.3 - カンゾーナ・ゴティカ:モテトゥス
Canzona Gothica: Motetus
[02:49] - カンゾーナ・ゴティカ:オルガヌム
Canzona Gothica: Organum
[03:30] - カンゾーナ・ゴティカ:サルタレロ
Canzona Gothica: Saltarello
[02:17] - 弦楽のために
Per Archi
[11:29] - セレモニアル・マーチ
Ceremonial March
[05:36] / G.5 - リクディム 4つのイスラエル舞曲:アンダンテ・モデラート
Rikudim: I. Andante moderato
[02:50] / G.4 - リクディム 4つのイスラエル舞曲:アレグレット・コン・エレガンツァ
Rikudim: II. Allegretto con eleganza
[02:25] / G.4 - リクディム 4つのイスラエル舞曲:アンダンテ・コン・ドルチェッツァ
Rikudim: III. Andante con dolcezza
[03:40] / G.4 - リクディム 4つのイスラエル舞曲:コン・モート・エ・フォッレメント
Rikudim: IV. Con moto e follemento
[01:20] / G.4 - コンチェルト・グロッソ:パート1
Concerto Grosso: Part I
[05:05] - コンチェルト・グロッソ:パート2
Concerto Grosso: Part II
[02:25] - コンチェルト・グロッソ:パート3
Concerto Grosso: Part III
[04:38] - エクスカリバー
Excalibur
[13:47] / G.5
Disc2
- 交響詩「スパルタクス」
Spartacus
[13:59] / G.6 / 35人 - 祝典序曲「オリンピカ」
Olympica
[10:51] / G.5 - ストーンヘンジ ブラスバンドのための
Stonehenge
[15:03] / G.6 - メランコリア 「敬意の協奏曲」から
La Melancolia
[09:08] - アッティラ 「シンフォニア・ハンガリア」から パートI
Attila! part I from ‘Sinfonia Hungarica’
[12:43] - ケベック 北のラプソディ:秋
Kebek: Autumn
[04:19] / G.4 - ケベック 北のラプソディ:冬
Kebek: Winter
[04:08] / G.4 - ケベック 北のラプソディ:春
Kebek: Spring
[02:49] / G.4 - ケベック 北のラプソディ:夏
Kebek: Summer
[03:08] / G.4
Disc3
- アコルディ・エ・コロリ 「二重協奏曲」から
Accordi e Colori from ‘Concerto Doppio’
[04:35] - 「ダブリン・ダンス」から パート2:ミンストレル・マン
Dublin Dances: Part 2 The Minstrel Boy
[03:13] / G.3 / 33人 - 「ダブリン・ダンス」から パート3:アイルランドの洗濯女
Dublin Dances: Part 3 The Irish Washerwomen
[02:26] / G.3 / 33人 - オスティナーティ
Ostinati
[18:30] / 44人 - 結婚行進曲
Wedding March
[05:17] / G.3 - カンゾーナ G. ガブリエーリへのオマージュ
Canzona from ‘Tre Skizze’
[08:51] - いにしえの時から
From Ancient Times
[19:40] / G.6 - グリムの童話の森 組曲 ジングシュピール「むかしむかし・・・」から
Grimm’s Fairytale Forest
[16:38] / G.5
プロヴァンス組曲: Suite Provencal
無名に近い若手作曲家のヤン・ファン・デル・ローストを世に知らしめるきっかけとなった作品で、現在でもよく演奏される人気曲。民謡をテーマに、バラエティ豊かな音楽が描かれます。
軽快な1楽章、せつない第2楽章、力強い第3楽章、かわいく楽しい第4楽章と、民謡に寄せて人生の喜怒哀楽を詰め込んだような1曲。聴く人の気持ちを明るくするような曲で、どのようなコンサートにもピッタリです。
[吹奏楽-輸入譜] プロヴァンス組曲: Suite Provencal 作曲:ヤン・ファン・デル・ロースト (Jan Van der Roost) グレード:3 演奏時間:7分20秒 出版社:デ・ハスケ・パブリッシング (De Haske Publishing) |
リクディム: Rikudim
ヤン・ファン・デル・ローストがイスラエル音楽のスタイルを使って一から書き上げた一曲。聴いているとバレリーナが浮かんでくるほど、叙情的でドラマティックな曲です。それもそのはず、タイトルはヘブライ語で”踊り”を意味するとか。
美しさや華々しさを感じるメロディーに、異国情緒あふれるメロディーがスパイスのように効いて、音楽の表情がどんどん変わります。最終章の第4楽章は速いリズムでフィナーレへと導き、「ホイ!」のかけ声で終わる人気の曲です。
[吹奏楽-輸入譜] リクディム: Rikudim 作曲:ヤン・ファン・デル・ロースト (Jan Van der Roost) グレード:4 演奏時間:9分24秒 出版社:デ・ハスケ・パブリッシング (De Haske Publishing) |
スパルタクス: Spartacus
古代ローマ時代、奴隷のスパルタクスの反乱を題材とした曲。映画や絵画などによく描かれてきた題材を、ヤン・ファン・デル・ローストは吹奏楽の壮大な交響詩にまとめあげました。ティンパニの鳴り響くオープニングから、”勇壮”と呼ぶにふさわしいメロディーが奏でられます。
しかし、リズムのせいか、どこかせっぱ詰まったような緊張感も感じます。中盤には一転、穏やかで静かな音楽へ。最後は再び重低音が響き、戦いを表す勇壮な音楽へと移ります。
スパルタクスが敗れるため、静かに幕を閉じるかと思いきや、栄光に満ちた華々しいフィナーレ。技術力はもとより、楽譜を読む力、表現力、集中力など、吹奏楽団の力量が試される楽曲です。
[吹奏楽-輸入譜] スパルタクス: Spartacus 作曲:ヤン・ファン・デル・ロースト (Jan Van der Roost) 編成:中編成 グレード:6 演奏人数の目安:35人 ※原則として各楽器1名(optionalは-1、div.は+1)で算出 演奏時間:13分50秒 出版社:デ・ハスケ・パブリッシング (De Haske Publishing) |
いにしえの時から: From Ancient Times
もともとは世界的なブラスバンド選手権の課題曲として作ったものを、ヤン・ファン・デル・ロースト自らが吹奏楽版に編曲した一曲。”余りに難しくなる”として編曲を中断したという逸話の残る難易度の高い曲です。
粛々とした静かな鐘の音を思わせるオープニングから、速いテンポへ移ると聴く人を魅了する和音の洪水。後半は、楽器が互いに美しいメロディーを歌い上げ、エンディングの直前には高らかに奏でられます。最後は目の覚めるような壮大で華やかなエンディングです。
”スパルタクス”が物語に沿わせたドラマティックな音楽とすると、”いにしえの時から”は、純粋に音楽を追求した結果、ドラマティックな音楽になったともいえるでしょう。18分強もある大作ですが、近年、吹奏楽コンクールでも人気を集めています。
[吹奏楽-輸入譜] いにしえの時から: From Ancient Times 作曲:ヤン・ファン・デル・ロースト (Jan Van der Roost) グレード:6 演奏時間:18分28秒 出版社:デ・ハスケ・パブリッシング (De Haske Publishing) |
ヤン・ファン・デル・ローストの作品をレパートリーに
吹奏楽の世界では重鎮となったヤン・ファン・デル・ロースト。しかし、氏も当然のことながらデビュー、駆け出しの頃がありました。さらによいものを目指し続けることで、第一線で活躍し続けられるのでしょう。
生誕60年の記念CDには、フレッシュな初期の作品から最近のものまで、珠玉の作品が収録されています。お気に入りの一曲を見つけてぜひ、レパートリーに加えてください。
吹奏楽を柱とした音楽出版社として2008年に設立いたしました。 「フォスター」という単語には、育てる・育成するといった意味があり、日本の吹奏楽をもっと元気に楽しく発展させていきたいという思いをこめています。みなさまのブラバンコンシェルジュとして、様々な情報を発信していきます。