吹奏楽界で爆発的な人気作品を生み続ける樽屋雅徳氏。なかでも代表曲「マードックからの最後の手紙」は2008年のリリースからその人気は衰えることを知りません。思い出深い曲のひとつに挙げるかたも多いのではないでしょうか?
この記事では、樽屋雅徳の最新作と、近年コンクール自由曲としても人気急上昇中の作品をご紹介します。
全曲試聴可🎧♫
実際の演奏動画もあります。演奏に加え、セッティングなども参考にしてください。選曲にお役立てくださいね。
タイトルに思いを詰めた樽屋雅徳作品
樽屋氏の作品タイトルを眺めていると、小説を選んでいるような感覚になりませんか?
“作家はタイトルを決めるのに一番神経を使う”といいますが、樽屋雅徳氏もまた、楽曲のタイトルに強い想いを込めており、音楽的な魅力もさることながら文学的素養の深さもうかがえます。
楽曲のテーマは、文学作品、神話・伝説、歴史上の人物や事件などさまざま。ひとつひとつのテーマを学んだ上で紡ぎ出される楽曲は、感情表現や情景描写がとても緻密で、実にドラマチックです。
“小説を深めるには行間を読む”といわれるように、樽屋作品もまた、ひとつひとつの音への想いを深めることで表情を変えていくのかもしれません。物語を味わうように樽屋雅徳作品を奏でてください。
樽屋雅徳 2023年新作
プリンセス・イン・デイドリーム
玉名女子高等学校委嘱による新作。勇敢な王女の冒険譚を描いた作品です。木管楽器の細かな動きや金管楽器の柔らかなハーモニーと力強い演奏で、しなやかでありつつも凛々しい女性ならではの強さが表現されています。
ティル・ナ・ローグ〜幻影の島〜(改訂小編成版)
アイルランドの神話に登場する楽園の一つで、常若の国とも呼ばれる「ティル・ナ・ローグ」。歌と踊りを愛する妖精たちの棲み家である楽園を賑やかなフレーズと心地良いハーモニーが体現する作品です。2012年発表の中編成版をベースに、小編成向けにオーケストレーションを改訂しています。
依依恋恋~恋路の道は恋の路~
いいれんれん:恋い慕うあまり離れられないさま 石川県の恋路海岸にまつわる悲恋の物語をもとに作曲されました。助三郎と鍋乃、そして源次の切ない恋路を追うように描かれています。
リップ・ヴァン・ウィンクル
アメリカの作家ワシントン・アーヴィングによる短編小説「リップ・ヴァン・ウィンクル」を描いたファンタジックな作品です。ワクワク感がいっぱいの可愛らしい音楽に仕上がっています。
聖ペテロの天国への鍵~マタイによる福音書16章~
システィーナ礼拝堂にあるフレスコ画のひとつで、イタリアの画家ピエトロ・ペルジーノの宗教画にインスピレーションを得て作曲されました。ルネサンス期の音楽を意識した和声の美しさが感じられます。
吹奏楽コンクール注目作品
蒼き三日月の夜
伊達政宗を題材に初陣・元服、幼少期の回想、父の死と熾烈を極める戦い、思いはせる三日月の夜、政宗の最期から現代までと、生涯を5つの場面に分けて辿った作品です。マンドリン合奏の曲として作曲した作品を吹奏楽用に加筆修正されました。 Fl, Asax, Claの印象的なソロも聴きどころのひとつです。
November 19 – Revised Edition
アメリカ第16代大統領リンカーンの激動の人生を音楽で回想する、壮大な映画音楽のような作品です。2017年発表の中編成版を小編成に変更、演奏時間もコンパクトになって新たに生まれかわりました。 史上初めて近代的な機械技術が主戦力となった南北戦場の情景を、ハイハットの硬質なリズムが牽引し、緊張感漂う管楽器のフレーズが駆け抜けていきます。穏やかな夕暮れなどノスタルジックなシーンとのコントラストが印象的な楽曲です。
マレーン姫の金の首飾り〈コンポーザーズ・カット・エディション〉
グリム童話の一編。ラプンツェルやなでしこと共通し、とある国の王子を恋仲にとなった姫君が塔に幽閉されるシチュエーションから始まります。 曲はそんなマレーン姫の一途な思いとしたたかさが描かれています。 比較的高難度の作品なので、今まで小編成作品を物足りなく感じていた皆さんにチャレンジしていただきたい1曲。
ペドロの奇跡の夜
一人の少年「ペドロ」の優しさあふれる行動とその心が表現されたメロディーは、まるで映画音楽のようです。雪の中の街の教会へと続く道、ペドロの優しい心から、ようやく街中に鳴り響かせることができた美しい鐘の音、それぞれのシーンを想像しながら演奏してみてはいかがでしょうか。
想ひ麗し浄瑠璃姫の雫
ねぶた音階、津軽三味線のイメージを織り込み、義経の伝説の壮大さや浄瑠璃姫の姫との切ない恋物語をイメージして作曲された樽屋ワールドを存分に味わえる人気作。 一途な浄瑠璃姫の思いが胸に迫ります。
編成違いによる比較記事も参考にしてください。
【まとめ】想いを観客に届ける樽屋雅徳作品
樽屋雅徳氏のドラマティックなメロディーは、聴く人によっていろいろな“なにか”を思い起こさせます。
歴史上の偉人であったり、大好きなマンガの主人公であったり、自分の経験や想いであったり、広々とした風景や風であったり…。
このような作品は、”ただ音を追って合わせる”だけでなく、”気持ちを合わせ”て演奏すると、音の深みがぐっと増してくるでしょう。“なにか”を思い起こさせるメロディーは、吹奏楽になじみのない観客も聴きやすいもの。
コンサートなどでもおすすめな樽屋雅徳作品をぜひ多くの方に楽しんでいただければと思います。
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吹奏楽を柱とした音楽出版社として2008年に設立いたしました。 「フォスター」という単語には、育てる・育成するといった意味があり、日本の吹奏楽をもっと元気に楽しく発展させていきたいという思いをこめています。みなさまのブラバンコンシェルジュとして、様々な情報を発信していきます。