吹奏楽界で爆発的な人気作品を生み続ける樽屋雅徳氏。なかでも代表曲「マードックからの最後の手紙」は2008年のリリースからその人気は衰えることを知りません。思い出深い曲のひとつに挙げるかたも多いのではないでしょうか?
この記事では、樽屋雅徳の2021年最新作と、2019年の吹奏楽コンクールの自由曲として多くの団体に演奏された人気作品をまとめてご紹介します。
全曲試聴可🎧 選曲の参考にお役立てくださいね
タイトルに思いを詰めた樽屋雅徳作品
樽屋氏の作品タイトルを眺めていると、小説を選んでいるような感覚になりませんか?
“作家はタイトルを決めるのに一番神経を使う”といいますが、樽屋雅徳氏もまた、楽曲のタイトルに強い想いを込めており、音楽的な魅力もさることながら文学的素養の深さもうかがえます。
楽曲のテーマは、文学作品、神話・伝説、歴史上の人物や事件などさまざま。ひとつひとつのテーマを学んだ上で紡ぎ出される楽曲は、感情表現や情景描写がとても緻密で、実にドラマチックです。
“小説を深めるには行間を読む”といわれるように、樽屋作品もまた、ひとつひとつの音への想いを深めることで表情を変えていくのかもしれません。物語を味わうように樽屋雅徳作品を奏でてください。
樽屋雅徳2021年最新作
ラ・ジョコンダ
レオナルド・ダ・ヴィンチの傑作「モナリザ」。未だ多くの解明されない神秘性を持ったこの絵画をテーマに「謎」「微笑」「ダ・ヴィンチ」の3楽章で表現しました。
大編成、グレード5の大作。ぜひチャレンジを!
https://www.fostermusic.jp/products/detail9993.htmll#utm_source=WordPress&utm_medium=blog&utm_content=blog1856-9993- 2021/03/10 発売
- 演奏形態: 吹奏楽
- 商品形態: レンタル譜
- 編成: 大編成 (49人~)
- グレード: 5
- タイム: 10分0秒
水面にうつりし月影のあこや姫〜琴笛の縁〜
山形に伝わる阿古耶姫と松の精との悲恋の物語「阿古耶の松」をテーマに書かれました。
木管楽器で歌われる二人の切ない恋心が詰まった阿古耶姫のテーマから一気に引き込むドラマティックな展開は樽屋氏ならでは。
是非、「阿古耶の松」を読んで二人の想いを汲み取りながら演奏してみてください。
![水面にうつりし月影のあこや姫~琴笛の縁~:樽屋雅徳 [吹奏楽中編成] - フォスターミュージック株式会社](https://www.fostermusic.jp/html/upload/save_image/FML0284_1.png)
- 2021/03/10 発売
- 演奏形態: 吹奏楽
- 商品形態: レンタル譜
- 編成: 小編成 (29人~)
- グレード: 3+
- タイム: 7分30秒
葦田鶴の音に泣かぬ日はなし
「住の江の 松ほどひさに なりぬれば 葦田鶴の音に 泣かぬ日はなし」
古今和歌集の中の巻第十五 恋歌五 779をテーマに作曲された作品で、恋人が来るのを待ち焦がれる女性の切ない恋心が描かれています。
![葦田鶴の音に泣かぬ日はなし:樽屋雅徳 [吹奏楽小編成] - フォスターミュージック株式会社](https://www.fostermusic.jp/html/upload/save_image/FML0275_1.png)
- 2021/02/10 発売
- 演奏形態: 吹奏楽
- 商品形態: レンタル譜
- 編成: 小編成 (22人〜)
- グレード: 3
- タイム: 7分17秒
想ひ麗し浄瑠璃姫の雫(小編成版)
2015年に作曲され、YouTubeチャンネルでも常に人気上位にランクインする「想ひ麗し浄瑠璃姫の雫」中編成版をもとに、オーケストレーションを小編成向けに改訂しました。
ねぶた音階、津軽三味線のイメージを織り込み、義経の伝説の壮大さや浄瑠璃姫の姫との切ない恋物語をイメージして作曲された樽屋ワールドを存分に味わえる人気作。 一途な浄瑠璃姫の思いが胸に迫ります。
![想ひ麗し浄瑠璃姫の雫(小編成版):樽屋雅徳 [吹奏楽小編成] - フォスターミュージック株式会社](https://www.fostermusic.jp/html/upload/save_image/FML0274_1.png)
- 2021/02/10 発売
- 演奏形態: 吹奏楽
- 商品形態: レンタル譜
- 編成: 小編成 (16人〜)
- グレード: 4
- タイム: 8分53秒
原典版はこちら
![想ひ麗し浄瑠璃姫の雫:樽屋雅徳 [吹奏楽中編成] - フォスターミュージック株式会社](https://www.fostermusic.jp/html/upload/save_image/FML0142_1.png)
ラ・ボエーム(改訂小編成版) (プッチーニ, G / arr. 樽屋雅徳)
ジャコモ・プッチーニの作曲した4幕オペラで、最もよく演奏されるイタリアオペラのひとつです
舞台はクリスマス・イブの夜。詩人ロドルフォはお針子ミミと出逢い愛し合う仲になります。しかしミミは身体が弱く、自分と暮らしていては助からないのではないかと心配するあまり、ロドルフォは冷たく接し別れようとしますが、その本心を知ったミミは自分から身を引きます。数ヶ月後、今にも死にそうなミミが訪れ、再会を喜ぶ二人でしたが、ミミは仲間たちとロドルフォの前で息を引き取ってしまう、そんな悲恋の物語です。
今回の編曲では、2008年に出版された大編成版と同様に、「冷たい手を」「おや!ムゼッタだ!」「ガヴォットだ!メヌエットだ!」「私の名はミミ」を取り上げ、編成を小さくし、抜粋部分のサイズを変更しました。小編成の特性を活かし、オペラの繊細な部分まで表現できる編曲になっています。
![ラ・ボエーム(改訂小編成版):ジャコモ・プッチーニ / 樽屋雅徳 [吹奏楽小編成] - フォスターミュージッ...](https://www.fostermusic.jp/html/upload/save_image/FML0276_1.png)
- 2021/02/10 発売
- 演奏形態: 吹奏楽
- 商品形態: レンタル譜
- 編成: 小編成 (22人〜)
- グレード: 4
- タイム: 7分13秒
吹奏楽コンクール自由曲人気作
斐伊川に流るるクシナダ姫の涙
古事記上巻に記される出雲神話「ヤマタノオロチ退治神話」より、物語のヒロイン、クシナダ姫にスポットを当てて書かれました。女性らしさや日本らしい曲調、樽屋氏ならではのドラマティックな展開が素敵な作品で、コンクールでも人気の高い1曲。
出雲神話で有名なヤマタノオロチ。スサノオの退治がよく知られていますが、きっかけとなったのは、ヤマタノオロチの犠牲になる直前のクシナダ姫の嘆きです。
メロディーは和の印象が強く、雅楽や神楽を感じさせる部分が随所にあります。女性的なメロディーから始まり、中盤では息も切らせない速く力強い音の連続。酔った龍のコミカルな音、眠っていくオロチから大円団へ。
スサノオの頭に飾られた櫛(クシナダ姫)が見た、ヤマタノオロチ退治です。
日本人になじみ深い音をモチーフにしたメロディーは、聴く人の想像力をかき立てます。
![斐伊川に流るるクシナダ姫の涙:樽屋雅徳 [吹奏楽中編成] - フォスターミュージック株式会社](https://www.fostermusic.jp/html/upload/save_image/FML0102_1.png)
無辜の祈り
2013年9月、東日本大震災から2年半が経とうとしていた東北を訪れた樽屋氏。
実際に足を運んだことで、各地の景色を眺めては、どう言葉にしていいかわからないほどの現実を目の当たりにし、しかしならが少しずつ少しずつ前に進もうとしている町の方々に出会い、深く考えさせられたといいます。
曲は「奇跡の一本松」「再び海へ」「ほんとうの幸福」の3つの印象で書かれ、心から笑顔になれる日が一日でも早く訪れますようにと祈る気持ちを込めて作曲されました。
![無辜の祈り:樽屋雅徳 [吹奏楽中編成] - フォスターミュージック株式会社](https://www.fostermusic.jp/html/upload/save_image/FML0120_1.png)
ちはやふる
平安時代を代表する歌人・在原業平の叶わぬ恋を描いた楽曲。
愛した姫君へのまっすぐな想いをたっぷりと歌い上げるメロディ、情感豊かなサウンドと切なくドラマチックな構成で、聴く人を曲で紡ぐ物語の世界へと誘います。
各楽器の音色を活かしたソロパートと美しいハーモニーのアンサンブルパートも聞かせどころです。
「20人のコンクールレパートリーVol.4」に収録しています。また、本作発表のスペシャルインタビューもぜひご覧ください。
![ちはやふる:樽屋雅徳 [吹奏楽小編成] - フォスターミュージック株式会社](https://www.fostermusic.jp/html/upload/save_image/FML0233_1.png)
眠るヴィシュヌの木
広大さ、優しさ、勇ましさ、美しさ、哀しさ、りりしさ…緩急がはっきりした、ドラマティックな楽曲で、さまざまなメロディーが現れては消えていきます。そのメロディーの流れが表しているのは、大自然の表情、人生の出来事、たった一人の心の内…と、さまざまに解釈できるでしょう。
古代インドで発生した神話の中で最高神の一人として描かれるのが、タイトルにある“ヴィシュヌ”。神話の中で描かれる「現実世界のすべてはヴィシュヌの夢の中にすぎない」という場面を、樽屋雅徳氏は見事に音楽化しています。
自分の外にも中にもある無限を感じながら、演奏してみましょう。
![眠るヴィシュヌの木:樽屋雅徳 [吹奏楽大編成] - フォスターミュージック株式会社](https://www.fostermusic.jp/html/upload/save_image/FML0194_1.png)
鳳が如く〜祭り〜
2016年、佐賀学園高等学校委嘱作品。
佐賀学園の地元・九州の祭り囃子を取り入れており、冒頭は「唐津くんち」のお囃子、後半には「長崎くんち」のメロディーが登場します。
「くんち」とは九州での秋祭りの総称で、地域ごとに特色や歴史が異なりますが、なかでも唐津くんちと長崎くんちは日本三大くんちのひとつであり、歴史ある勇壮なお祭りです。
タイトルは、唐津くんちの曳山にも飾られている鳳凰にちなんでいます。鳳凰が舞い降りたように、地域の人々の活力が溢れるくんちがずっとにぎわい続けるよう願いを込めて作曲されました。
![鳳が如く 祭り :樽屋雅徳 [吹奏楽小編成] - フォスターミュージック株式会社](https://www.fostermusic.jp/html/upload/save_image/FML0207_1.png)
遠つ人〜雁金の宰
勇猛果敢も温情深く親しみを覚える武将といわれた柴田勝家。
ある時は鬼と呼ばれるほどの秀でた武功で君主に貢献を重ね、ある時は混乱する戦国の世で離反した家臣が出ても決して恨まず、最期まで連れ添った家臣たちには生き延びることを許し、むしろそれを喜んだと言われるほどの人情深い人だったと言われています。
そんな武将、柴田勝家の家紋は、雁金紋。
雁金は昔から、よい知らせを運ぶ縁起の良い鳥とされ、群れで行動する習性から、結束や絆を表すと言われています。
仲間と結束してひとつの曲を作り上げる喜びもまたコンクールの良いところ。ぜひこの作品で、友情を深めてください。
![遠つ人 雁金の宰(かりがねのつかさ) :樽屋雅徳 [吹奏楽小編成] - フォスターミュージック株式会社](https://www.fostermusic.jp/html/upload/save_image/FML0152_1.png)
キリストの復活〜ゲツセマネの祈り
キリストが十字架にかけられる前の晩いわゆる「最後の晩餐」のあと、キリストは<ゲツセマネ>と呼ばれたオリーブの木の広場に行き、目の前に迫る十字架を恐れ、憂い悲しみ祈り続けていたと言われています。
どうかこの運命から逃れられないかと願ったキリストも、数時間後すべてを受け入れる決心をし、自ら逮捕されるべく足を進めました。一度は命を落としたキリストですが、前の晩に行ったゲツセマネでの深い祈りにより、キリストは永遠の命を勝ち取り、復活を遂げたといわれています。
曲は、キリストの深い悲しみや葛藤、祈り、そして、復活を描いています。
![キリストの復活 ゲツセマネの祈り:樽屋雅徳 [吹奏楽大編成] - フォスターミュージック株式会社](https://www.fostermusic.jp/html/upload/save_image/FML0105_1.png)
November 19 – Revised Edition
アメリカ第16代大統領リンカーンの激動の人生を音楽で回想する、壮大な映画音楽のような作品です。2017年発表の中編成版を小編成に変更、演奏時間もコンパクトになって新たに生まれかわりました。
史上初めて近代的な機械技術が主戦力となった南北戦場の情景を、ハイハットの硬質なリズムが牽引し、緊張感漂う管楽器のフレーズが駆け抜けていきます。穏やかな夕暮れなどノスタルジックなシーンとのコントラストが印象的な楽曲です。
今年度、東日本学校吹奏楽大会に於いて、秀明八千代高等学校が金賞を受賞、福島県立原町高等学校が全日本吹奏楽コンクール東北支部大会にて金賞を受賞しました。
![November 19 - Revised Edition:樽屋雅徳 [吹奏楽小編成] - フォスターミュージック株式会社](https://www.fostermusic.jp/html/upload/save_image/FML0241_1.png)
Crossfire – November 22
世界的に有名な未解決事件「ジョン・F・ケネディ暗殺事件」をテーマに、さまざまなシーンと感情を音楽に詰め込んだハイグレード楽曲。
希望に満ちたケネディ大統領に襲いかかる不穏なフレーズ。楽曲全体がミステリアスな雰囲気に包みこまれ、これから起こる悲劇を物語ります。
賛美歌やアメリカ国家など、耳馴染みのあるメロディーが印象的に使われているのも、この楽曲の面白さです。
今年度、全日本吹奏楽コンクールに於いて光ウィンドオーケストラが全国大会で金賞を受賞、鏡野吹奏楽団が四国支部大会で金賞を受賞しました。
![Crossfire - November 22:樽屋雅徳 [吹奏楽大編成] - フォスターミュージック株式会社](https://www.fostermusic.jp/html/upload/save_image/FML0249_1.png)
【まとめ】想いを観客に届ける樽屋雅徳作品
樽屋雅徳氏のドラマティックなメロディーは、聴く人によっていろいろな“なにか”を思い起こさせます。
歴史上の偉人であったり、大好きなマンガの主人公であったり、自分の経験や想いであったり、広々とした風景や風であったり…。
このような作品は、”ただ音を追って合わせる”だけでなく、”気持ちを合わせ”て演奏すると、音の深みがぐっと増してくるでしょう。“なにか”を思い起こさせるメロディーは、吹奏楽になじみのない観客も聴きやすいもの。
コンサートなどでもおすすめな樽屋雅徳作品をぜひ多くの方に楽しんでいただければと思います。
樽屋雅徳YouTubeプレイリスト
吹奏楽を柱とした音楽出版社として2008年に設立いたしました。 「フォスター」という単語には、育てる・育成するといった意味があり、日本の吹奏楽をもっと元気に楽しく発展させていきたいという思いをこめています。みなさまのブラバンコンシェルジュとして、様々な情報を発信していきます。