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吹奏楽「白虎繚乱~なれし御城に残す月影~|樽屋雅徳」を解説!楽曲テーマ、編成、演奏ポイントまとめ

「白虎繚乱~なれし御城に残す月影~」(以下「白虎繚乱」)は、会津藩を守るため果敢に戦った白虎隊や会津藩士の誇り高き武士の精神をテーマに樽屋雅徳氏が作曲した吹奏楽曲です。幕末という混沌の時代に、忠誠を誓った君主と愛する郷土を命がけで守ろうとした少年たちを表現した楽曲は、力強い躍動感が特徴の和風曲で、発表以来高い人気を集めています。

曲のテーマやストーリー、 人数や楽器構成、グレード、演奏時間など、演奏や鑑賞がより充実する情報をまとめました。コンクール自由曲の選曲や楽曲分析のために情報収集をしている方、必見の解説記事です。

演奏動画は、樽屋雅徳氏自身がタクトを振り、土気シビックオーケストラによるものです。ぜひご視聴ください。

目次

『白虎繚乱』のテーマ・ストーリー

舞台は幕末期。白虎隊(びゃっこたい)は、幕末の会津藩でつくられた 16〜17歳ほどの武家の少年たちによる部隊です。

会津藩は代々、徳川家に忠義を尽くしてきました。その藩主・松平容保(まつだいら かたもり)は、幕府に頼まれて治安が乱れた京都を守る役目「京都守護職」を引き受け、新選組などを率いて治安維持にあたりました。

しかし時代の流れは大きく変わり、幕府は力を失っていきます。鳥羽・伏見の戦いで旧幕府軍が敗れると、新政府は会津を「討つべき敵」と見なしました。会津藩は追い詰められ、ついに戊辰戦争(ぼしんせんそう)が始まります。

大軍に攻め込まれるのを覚悟した会津では、年齢ごとに4つの部隊を編成。その中で最も若い少年部隊が白虎隊でした。彼らは本来、城下の守りを担当する後方部隊でしたが、戦況が悪化し、白虎隊二番隊40名に出陣命令が出されます。

圧倒的な兵力差の中での戦いは厳しく、逃げ延びたのは20名ほど。彼らがたどり着いた飯盛山(いいもりやま)から見えたのは、炎に包まれているように見えた会津若松城でした。「ついに落城した」と思い込んだ少年たちは、会津への忠義を示すため 集団で自決してしまいます。生き残ったのはたった一人。白虎隊の悲劇は、彼の語りによって後世に伝えられました。

その後も会津藩は奮戦しますが、1ヶ月の籠城の末に降伏。多くの武士や女性たちも命を落とし、壮絶な結末を迎えました。

本楽曲の副題である「なれし御城に 残す月影」は、戊辰戦争で自ら銃を持って戦った山本八重(新島八重)が開城前夜に詠んだ句の一部で、慣れ親しんだお城を去らねばならぬことへの無念を詠ったものです。彼女は「幕末のジャンヌ・ダルク」とも呼ばれ、大河ドラマ「八重の桜」のモデルとなりました。

楽曲の特徴

この楽曲は、数奇な運命を辿った白虎隊の物語を、樽屋雅徳らしい緻密な感情表現や情景描写でドラマチックに描き出しています。

力強いティンパニが音楽の始まりを告げ、鐘の音のようなパーカッションに導かれるように哀愁を感じさせるフルートソロが続きます。あたたかな音色の木管アンサンブルから次第に金管楽器が加わり、厚みを増していく冒頭部。

鼓動のようなリズムや力強いメロディが現れ、勇ましく躍動する白虎隊の様子を映し出すようなAllegro部分が続きます。

幸せに暮らしていた故郷の情景を回想しているかのような切なく美しいメロディとハーモニーの中間部は、静けさの中にも力強さや熱気を感じます。日本人の琴線に響く感動的な展開です。

白虎隊の戦友たちとの絆を表現するために、旋律や和音の変化、楽器の組み合わせなどの工夫を施されたクライマックスへ。パートごとに呼びかけ合うようなフレーズを経て、輝く未来を想像させる爽やかなフィナーレを迎えます。

日本の史実が題材になっているので、パーカッションには締太鼓、和太鼓が用いられるのも特徴の1つです。

編成(演奏人数)は?

「白虎繚乱」は、小編成に分類され、18〜31パートで演奏できる楽曲です。
2025年10月以降、打楽器のオプショナルパートが追加されています。

小編成(18〜31パート)
ピッコロ/フルート(1〜2)/オーボエ/バスーン/クラリネット(B1〜3、バス)/サクソフォン(ソプラノ、アルト1〜2、テナー、バリトン)/トランペット(1〜3)/ホルン(1〜3)/トロンボーン(1〜3)/ユーフォニアム/テューバ/弦バス/パーカッション(1〜4)

主要ソロ:フルート
○B♭トランペット最高音:G

セクション小編成(18〜31パート)
FlutePiccolo(optional)
1,2(optional)
Oboe1(optional)
Bassoon1(optional)
ClarinetB♭ 1,2,3(optional)
Bass Clarinet
SaxophoneSoprano(optional)
Alto1,2(optional)
Tenor
Baritone
Trumpet1,2,3(optional)
Horn1,2,3(optional)
Trombone1,2,3(optional)
EuphoniumB.C/T.C
Tuba1(opt.div)
String Bass1(optional)
Percussion・Percussion 1(Timpani, Wind Chimes)
・Percussion 2((Marimba,) Suspended Cymbal, Whip, 拍子木orClaves, Anvil, Sleigh Bells, Crush Cymbals)
・Percussion 3(Vibraphone, Glockenspiel, 締太鼓, 和太鼓, (Bass Drum))
・Percussion 4 (Optional) (Bamboo Chimes, Bass Drum)
・Percussion 5 (Optional) (Marimba, Crush Cymbals, Xylophone, Glockenspiel)

グレード(難易度)と演奏時間

小編成版はグレード3+。演奏時間6分50秒。吹奏楽コンクール自由曲の規定演奏時間内ですが、7分が目安の場合は演奏に注意してください。

作曲者は?

作曲家は樽屋雅徳。吹奏楽オリジナル楽曲です。

【略歴】1978年千葉県銚子市生まれ。武蔵野音楽大学音楽学部作曲学科卒業。佐藤博、宮本良樹各氏に師事。フランスで吹奏楽曲「Ardent Overture」を出版。代表作として「絵のない絵本」「民衆を導く自由の女神」「マゼランの未知なる大陸への挑戦」「ラザロの復活」「マードックからの最後の手紙」などがある。全国の吹奏楽団やマーチングバンドからの委嘱も数多く、その作品の多くが国内外問わず広く演奏され、日本でもっとも人気のある作曲家のひとりである。また、作曲・編曲の傍ら、吹奏楽指導やコンクール等の審査員、執筆活動などでも多くの成果を挙げている。2004年~2018年まで銚子市立銚子高等学校の音楽監督を務めマーチングコンテストで全国大会へ、吹奏楽コンクールでは東関東大会、東日本大会へと導く。現在はベルモンテウィンドオーケストラの指揮者・音楽監督を務め、指導者としても高い評価を受けている。

今回のピックアップ楽曲紹介【商品詳細】

白虎繚乱~なれし御城に残す月影~:樽屋雅徳 [吹奏楽小編成-レンタル譜]

  • 演奏形態: 小編成(18-31パート)
  • グレード: 3+
  • 演奏時間: 6分50秒
  • FML-0351(フォスターミュージック)
  • 発売日: 2024/02/28

本楽曲は、樽屋雅徳吹奏楽作品集Vol.3「ペルソナ・ノン・グラータ」に収録されています。

「白虎繚乱」演奏動画紹介

YouTubeで公開されている団体の『白虎繚乱』演奏動画を集めました。
こちらのページで紹介して欲しい、という団体様はぜひご一報ください→お問い合わせ

千葉県立幕張総合高等学校シンフォニックオーケストラ部

南砺市立福野中学校・生駒市立生駒中学校

この曲をもっと知りたくなったら

フォスターミュージックサイトには作曲家コメントのフルバージョンをはじめ、サンプルスコアダウンロード閲覧、編成詳細、修正履歴、公式YouTube音源動画など、曲に関する情報を網羅しています。
また、YouTubeで公開されている演奏動画団体の聴き比べができるものもあるので、演奏イメージ作りにもお役立ていただけます。是非ご活用ください。

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