東京藝術大学音楽学部作曲科を卒業後、同大学大学院修士課程を修了。武満徹作曲賞や全日本吹奏楽連盟作曲コンクール第1位などを受賞し、吹奏楽やアンサンブルのほか、映画・アニメ・ゲーム音楽の編曲など、クラシックの枠を越えて幅広く活躍されています。
吹奏楽では、全日本吹奏楽コンクールの自由曲としても人気が高く、上位大会を目指すバンドからの特に高い支持を得ています。
美しく緻密な和声、音色のレイヤー、そして演奏者への温かな視点が織りなす作品世界は、演奏する側にも聴く側にも深い感動を届けてくれます。練習すればするほど新たな発見や魅力に気付かせてくれる長生作品。フォスターミュージックで人気の楽曲を一挙に紹介します。
長生淳 吹奏楽人気作品
久堅の幹[大編成]
中央大学吹奏楽部の第50回定期演奏会記念の委託作品。「年月の重み」と「人々の営みの積み重ね」をテーマにした、壮大なスケールを持つ交響詩です。
タイトルの《久堅の幹》は、“悠久の時の中にそびえ立つ、揺るぎない幹”を意味します。泉のように静かに湧き出る序奏から始まり、流れゆく川が時に谷を、時に荒れ地を、やがて肥沃な大地を進むように、さまざまな景色を音楽で描き出します。全体を通じて、50年という歴史が育んできた確かな軌跡と、その幹をさらに力強く伸ばしていく未来への願いが込められています。
曲中では「中央大学」の“中央=C”の音を中心に据えたり、“CHUO”の文字から導かれたモチーフを用いるなど、象徴的なモチーフも巧みに織り込まれており、知的な構造美と情感あふれるドラマが同居した傑作です。重厚な響きと語りかけるような旋律が、聴く者の心に深く届くことでしょう。

- 作編曲: 長生淳
- 演奏形態: 吹奏楽大編成(38パート)
- グレード: 5
- 演奏時間: 15分50秒
- 出版: フォスターミュージック(FML-0104)
- 発売日: 2013/07/16
《地球》~『トルヴェールの惑星』より[中編成]
サクソフォン四重奏団「トルヴェール・クヮルテット」のために編曲した『トルヴェールの惑星』。その中から、オリジナルで加えられた「地球」の楽章が、吹奏楽版として生まれ変わりました。
ホルスト《惑星》への敬意を込めつつ、“地球こそが平和の惑星になりますように”という強い願いをテーマに掲げた作品です。第一主題にはホルストの《セント・ポール組曲》からジーグの旋律を引用し、第二主題は“EARTH”という綴りを音に変換した自作のモチーフで構成。さらに《惑星》の各主題の断片や、あの有名な“ジュピター”の旋律までもが織り込まれ、壮大な宇宙の叙事詩として展開します。
ベルが響き渡る中、流れ星のごとく管楽器が勢いよく壮大な宇宙の世界へ誘います。切なく甘美的なアルトサックスソロも聴かせどころ。平易な編成でありながら、スケールの大きな世界観を描けるのが本作の魅力です。
海外でも人気が高く、配信アルバムにも数多く収録されています。

- 作編曲: 長生淳
- 演奏形態: 吹奏楽中編成(30 – 34パート)
- グレード: 4+
- 演奏時間: 7分15秒
- 出版: フォスターミュージック(FML-0121)
- 発売日: 2014/03/20
昂揚の漣 (こうようのさざなみ)[中編成]
若い演奏者たちに向けて、「結果だけを追わず、とにかく思い切り立ち向かってほしい」という想いを込めて書いた一曲。
構成はソナタ形式を下敷きにしながらも自由な展開を見せ、苦しみを経て栄光へ向かう…というおなじみの図式を踏襲しつつも、この作品では“常に前向きであること”が最大のテーマ。困難な場面にあっても打ちひしがれることなく、波が少しずつ心を奮い立たせるように、希望がじわじわと広がっていきます。
冒頭から徐々に高揚する気分のうねり。響き合う声部が幾重にも絡み合い、やがてひとつの目標に向かって到達していく――まるで、仲間とともに乗り越える青春のドラマそのものです。
技術面では、複雑な声部の交錯が大きな挑戦ポイント。しかし、その“やや大変”を超えた先にこそ、きっと得られるものがある。そんな長生氏のエールが、この曲には込められています。

- 作編曲: 長生淳
- 演奏形態: 吹奏楽中編成(32 – 33パート)
- グレード: 3+
- 演奏時間: 9分16秒
- 出版: フォスターミュージック(FML-0198)
- 発売日: 2017/11/15
フォー・スターズ・オブ・トゥモロウ[小編成]
“For Stars”――タイトルの直訳は「星のために」ですが、この曲に込めたのは “Wishes for Stars”、すなわち「星への願い」です。
「どうか音楽をもっと好きになりますように。困難があっても、変わらず音楽を好きでいられますように。そして、音楽と深く向き合い、創ることの喜びを知ることができますように。」
そんな3つの願いが、この曲の隅々にまで込められています。
曲中に現れる立ちはだかるような力強い楽想は、“困難があっても”という願いの反映。そして、普段以上に細かく書き込まれた演奏指示は、“深く音楽と向き合う喜び”への導きです。フレーズの息遣いや色合いの変化、音と音の間の時間、パート間のやりとり――
一音一音に耳を澄ませ、音符の外にあるヒントとも丁寧に向き合うことが、この作品の魅力を引き出す鍵となります。「明日の星(スター)」を目指して、丁寧に作り上げてください。
令和5年度 第53回「JBA下谷賞」受賞作品

- 作編曲: 長生淳
- 演奏形態: 吹奏楽小編成(23 – 26パート)
- グレード: 4
- 演奏時間: 7分30秒
- 出版: フォスターミュージック(FML-0304)
- 発売日: 2022/01/27
サクソフォン作品
ラ・ヴィ・ヴルトェーズ[サクソフォン4重奏]
ヴィーヴ!サクソフォン・クヮルテットの結成25周年を記念し、2024年に書き下ろしたサクソフォン四重奏曲です。
タイトルの意味は“ビロードのような人生”。柔らかく、上品な肌触りと深い光沢を持つビロード、その縫製には高度な技術が求められます。四半世紀にわたって積み重ねてきたヴィーヴ!の歩みにふさわしい比喩として、この言葉が選ばれました。
3楽章からなり、1楽章では歌を、2楽章ではビロードのようなハーモニーを、そして3楽章では、リズムとアンサンブルの妙味という、それぞれ異なるテーマで構成され、サクソフォンならではの音色と表現力が最大限に活かされています。
さらに、全曲を通して漂う“ひとつの想い”を感じ取り育てていくことで、より深い表現が可能になるでしょう。
難易度はグレード5と非常に高く、全楽章通せば14分にも及ぶ大作ですが、2024年度の全日本アンサンブルコンテストで光ヶ丘女子高等学校吹奏楽部が取り上げ、演奏動画が公開されるやSNS上でも話題に。新たなレパートリーとして今後定着していくことでしょう。

- 作編曲: 長生淳
- 演奏形態: サクソフォン4重奏(S.sax./A.sax./T.sax./B.sax. )
- グレード: 5
- 演奏時間: 14分0秒
- 出版: フォスターミュージック(FME-0600)
- 発売日: 2024/11/28
ラ・テネレッツァ[テナーサクソフォン&ピアノ]
サクソフォン奏者・仲田守氏のアルバム『モン・トレゾール』のために、長生淳が書き下ろしたテナー・サクソフォンとピアノのための作品。もともとは2015年、おかやま山陽高校吹奏楽部と仲田氏の共演のために作られた協奏曲《Allegro ma molto…》の第2楽章にあたる部分を再構成したものです。
タイトルは、イタリア語で「やさしさ」「柔和さ」の意味。その名のとおり、作品は内に秘めた温もりと包み込むような思いが、静かに、しかし深く語りかけてきます。仲田氏の人柄に寄り添いながら書かれたという旋律は、決して声高ではなく、やわらかく胸に届く音の手紙のよう。テナー・サクソフォンのまろやかで深い音色とピアノの繊細なタッチが溶け合いながら、静かな情熱と優しさを描き出します。
心を込めて“歌う”という演奏の原点に立ち返らせてくれる一曲。

- 作編曲: 長生淳
- 演奏形態: サクソフォンソロ(T.sax./Pf. )
- 演奏時間: 5分30秒
- 出版: フォスターミュージック(FME-0549)
- 発売日: 2023/07/27
ル・モ・エモシォネル[テナーサクソフォン&ピアノ]
前述同様、仲田守氏の70歳記念アルバムのための書き下ろし作。
フランス語で“感情をこめた言葉”という意味のタイトルには、親から子へ注がれる、尽きることのない想いが込められています。語りかけるような旋律、そして時折あふれ出すようにこみ上げる感情、静かな独白のようでもあり、胸の奥でじっと響き続ける祈りのようでもあります。
作曲者自身の体験や、仲田氏のご家族への思いも重ねられたというこの曲は、演奏者の人生経験や感性によって、さまざまな表情を見せる作品です。だからこそ、譜面の行間に込められた“言葉にならないもの”をどう音にするか。それを探る過程そのものが、演奏者にとっての大切な旅となるでしょう。
人生の節目にこそ吹いてみたい、深い感情と優しさに満ちた一曲。

- 作編曲: 長生淳
- 演奏形態: サクソフォンソロ(T.sax./Pf. )
- 演奏時間: 5分50秒
- 出版: フォスターミュージック(FME-0550)
- 発売日: 2023/07/27
長生淳作品 収録アルバム
Mon tresor – モン・トレゾール(私の宝物):仲田守

- ザ・マーベラス・パス 〜 ふたつの小さなロンド風アンダン(光田 健一)
- アレグロ・コン・アニマ(鹿野 草平)
- ラ・テネレッツァ(長生 淳)
- ル・モ・エモシォネル(長生 淳)
- テナー・サクソフォーンとピアノのためのソナチネ(伊藤 康英)
- アダージョ(ジャン=バティスト・バリエール)
- コラール(アストル・ピアソラ arr. 啼鵬)
- タンティ・アンニ・プリマ(アストル・ピアソラ arr. 啼鵬)
- 紅葉(庵原良司 arr. 光田健一)
- メモリア(江原大介)
- アンフォゲッタブル(アーヴィン・ゴードン arr. 真島俊夫)
交響詩「モンタニャールの詩」土気シビックW.O. Vol.17

- ヴィヴァ・ムジカ! (アルフレッド・リード)
- 映画「天地創造」より(黛 敏郎K.フォイトコム)
- 交響詩「モンタニャールの詩」 (ヤン・ファンデルロースト)
- ムービング・オン (川上哲夫)
- キリストの復活〜ゲツセマネの祈り (樽屋雅徳)
- フルートと管弦楽のためのコンチェルティーノ (C.シャミナード)
- ドラゴンの年(フィリップ・スパーク)
- 久堅の幹 (長生 淳)
ワコーバンドコレクション2018

- ハンズ・アクロス・ザ・シー(アメリカン・ドリームス)(鈴木 英史)
- 飛龍の鵠(改訂版) (樽屋雅徳)
- パラフレーズ・パァ 《スタティック・エ・エクスタティック》 アヴェック・アン・プロローグ・エ・レピローグ (バージョン・オルタネイティヴ) (天野正道)
- ウィンター・スカイ 新しき世界へ (成田勤)
- 千代のかざし (井澗昌樹)
- 海底ミステリー (島田尚美)
- 昂揚の漣 (長生 淳)
- 歌劇「ポーギーとベス」より (ガーシュウィン/福島弘和)
交響詩「アルプスの詩」 土気シビックW.O. Vol.21

- 五月の風(真島俊夫)
- November 19(樽屋雅徳)
- コラールとカプリチオ(アーン・ラニング)
- ツイン・ポーツ序曲(マーク・キャンプハウス)
- 「蛍の光」による変奏曲(シモーネ・マンティア)
- 夢〜岩井直溥先生の思い出に(真島俊夫)
- ミュージカル「エリザベート」より(M.クンツェ,S.リーヴァイ/ヨハン・デ=メイ)
- 昂揚の漣(長生淳)
- 交響詩「アルプスの詩」(フランコ・チェザリーニ)
コンクール自由曲ベストアルバム6「無辜の祈り」

- 夢への冒険 (福島弘和)
- 「白鳥の湖」によるパラフレーズ (井澗昌樹)
- 序曲「アエターティス・ノワエ」 (久保太郎)
- 風の渡る丘 吹奏楽のための (中橋愛生)
- ひまわり (福島弘和)
- 《地球》 〜『トルヴェールの惑星』より (長生淳)
- 三文オペラ (クルト・ヴァイル/加養浩幸)
- 青葉のころに (河邊一彦)
- 無辜(むこ)の祈り (樽屋雅徳)
- 「交響曲第5番」より第1楽章 (グスタフ・マーラー/瀧山智宏)
第三回福島市古関裕而作曲コンクール
長生淳氏が審査員を務める、福島市古関裕而作曲コンクールが今年も開催されます。
未公開の吹奏楽作品で、演奏時間は4〜6分。若年層にも演奏可能な作品が求められます。
本選会はシエナ・ウインド・オーケストラによる公開演奏。作曲家を目指す皆さん、未来の代表作を目指して応募してみませんか?
📅 応募締切:2025年8月18日(月)
📍 詳細・応募要項:福島市公式サイト
【まとめ】美しい音の重なりと奏者への温かな視点が織りなす長生作品
美しい旋律と吹奏楽ならではの色鮮やかな響き、作品に込められた熱いメッセージによって、多くの吹奏楽ファンを魅了している長生作品。難しい作品も多いですが、技術的にも表現面でも大きな成長と喜びをもたらしてくれるでしょう。ぜひ本記事を参考に、自分たちのバンドにぴったりの長生作品を選び、音楽の持つ感動を存分に味わってみてください。
未来の星たちへ向けた長生氏からのエールが、きっとあなたの演奏する音楽にも新たな輝きを与えてくれるはずです。
吹奏楽を柱とした音楽出版社として2008年に設立いたしました。 「フォスター」という単語には、育てる・育成するといった意味があり、日本の吹奏楽をもっと元気に楽しく発展させていきたいという思いをこめています。みなさまのブラバンコンシェルジュとして、様々な情報を発信していきます。