井澗昌樹氏の音楽は”禍福はあざなえる縄のごとし”という言葉がぴったり。心がざわざわとする不協和音と美しいメロディー、どちらも兼ね備えた旋律で、吹奏楽界の注目を集めています。
人の内面を表現する井澗昌樹の曲
「井澗昌樹」を初見で「いたにまさき」と読める人は、少ないでしょう。漢字とひらがなのギャップのように、井澗昌樹氏とその作品のギャップは、知る人ぞ知るところ。
おもしろい人・楽しい人という本人の印象と、気持ちをザワザワさせるような不協和音を巧みに使った楽曲のギャップに、少なからず驚くようです。
物事は1つの面だけでなく、いろいろな面があります。たとえば、恋とはハッピーなことばかりではなく、切なさや苦しみもあわせ持つもの。
井澗昌樹氏の作品は、物事の本質を多方面からとらえ、吹奏楽で表現しようとしているのでしょう。清濁をあわせ持ち、心の中そのままのメロディーに惹かれる人が増えています。
祝典序曲「祈りは翼となって」: Festive OvertureThe wings of prayer
井澗昌樹
作品紹介で、「あふれる思いは言葉となり、言葉は祈りとなる」と井澗昌樹が記しています。祝詞や聖歌がそれに当てはまるのでしょうか。しかし、この作品での祈りは、宗教的なものではなく、”人間の根源的な欲求”とされています。
金管楽器の柔らかな祈りのメロディーではじまり、祈りが広がり地球を包み込むようなエンディングまで、さまざまな形の祈りが現れます。中盤には、日本の祭りを思い起こさせるような荒ぶるメロディーも。
一曲の間を通して”力強さ”が感じられます。穏やかで優しいメロディーにも感じる力強さは、祈りとしての想いの強さの現れかもしれません。
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祝典序曲「祈りは翼となって」: Festive OvertureThe wings of prayerFML-0024 |
愛の祭壇: Altar of Love
井澗昌樹
「心が砕ける音は、いつだってほんの少し遅れて聞こえてくるものだ」で始まる、井澗昌樹自身の作品紹介は、一編の詩のようです。
この曲は、砕け散った想い…恋のレクイエムなのでしょう。切なさを感じさせるひとつの旋律が、さまざまな形で繰り返し現れては消えます。
中盤では、目覚めるような一気呵成にテンポアップし、激情があふれ出すようなメロディーの中で主題が感じられます。
最後は下っていく音階に導かれ、大音響で終わります。失恋を昇華させ、またひとつ成長するために。
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愛の祭壇: Altar of LoveFML-0054 |
ドールズ・コレクション I ~おもちゃの兵隊と: Dolls Collection I – Pieces of My Toy Soldiers –
井澗昌樹
電車の中で、ウサギのぬいぐるみの手が取れてしまったとき、生き物がケガをしたかのように「病院へ連れて行ってあげて」と語った小さな子。その言葉がインスピレーションとなり、子どもが感じている無機質なものへの生命感を曲にしたと井澗昌樹が語っています。
かわいらしさとともに、どこか不思議の世界を思い起こさせるメロディーの序盤、力強い魔法を思わせる中盤を経て、優しく穏やかな終章へ。
カタカタと動くおもちゃが今にも止まりそうになるのを思い起こさせるメロディーの後、テンポアップしてのフィナーレで締めくくられます。
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ドールズ・コレクション I ~おもちゃの兵隊と: Dolls Collection I – Pieces of My Toy Soldiers –FML-0072 |
束の間の恋の歌: Song of Lily, Long for Beauty
井澗昌樹
「愛の祭壇」が恋へのレクイエムとすれば、「束の間の恋の歌」は、恋への賛歌かもしれません。何かを請う想いが”恋”といわれますが、「しなだれる束縛から脱離しようとする強烈な欲求そのものに人は恋をするもの」と井澗昌樹は作品紹介で記しています。
束の間でも、恋は恋。いや、強い想いは長くは続かず、恋という激情は、いずれ穏やかな愛に変わっていくのでしょう。”恋”の間の心の高ぶりを表すような名曲です。
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束の間の恋の歌: Song of Lily, Long for BeautyFML-0099 |
カラフル: Colorful
井澗昌樹
兵庫県立伊丹高校委嘱作品で、日本の新しい吹奏楽曲を紹介する「21世紀の吹奏楽 響宴」の第16回にも選ばれた作品です。
作品紹介の中で、井澗昌樹は「心に生まれる、あらゆる想いの混在を見つめることは、とても息苦しい。そんな戸惑いが、いつだって我々の胸を締めつけている」「白とは無彩色だが、決して彩がないのではなく、“すべてを均等に含んでいる状態”が正確な表現。それは未分なカラフル」と記しています。
「カラフル」というタイトルながら、テーマは白。すべての色を含むため、どのような色にも変化できる白ですが、すべての色を含んで自分の色がない哀しさもあります。
多くの想い(色)を心に抱える青春の苦しみと喜びを表した名曲。激しいリズムと不協和音の中に、美しい旋律が流れる井澗昌樹らしい作品です。
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カラフル: ColorfulFML-0110 |
前奏曲「このほとり」: Prelude along the river
井澗昌樹
今年レンタル開始の最新作です。
大竹ライオンズクラブの委嘱により2015年に作曲されました。
大竹市は山口県との境に位置する広島県南西部の市で、その県境を流れる小瀬川(おぜがわ)は、藩政時代には安芸(広島)側で木野川(このがわ)と呼ばれており、タイトルの「この」とは、連体詞ではなく木野川のことを表しています。
「今その時が穏やかに流れていくということは、ただそれだけで素晴らしいことなのだ」
と語る井澗氏。
日々の忙しさの中で忘れてしまいがちな慈しみの気持ちを思い出させてくれる作品です。
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前奏曲「このほとり」: Prelude along the riverFML-0187 |
現代吹奏楽で注目の井澗昌樹作品を吹奏楽で!
井澗昌樹のオリジナル作品は、聴く人を選ぶでしょう。不協和音の中にキラキラとした美しい旋律を感じられる人が、井澗作品の深みへと引き込まれていくようです。それは、絶望の中で希望を見つける喜びに似ているのかもしれません。
また、不協和音をピタリと奏でるには、テクニックも必要です。難易度が高いものが多い井澗昌樹の作品ですが、ぜひ一度トライしてみてください。
吹奏楽を柱とした音楽出版社として2008年に設立いたしました。 「フォスター」という単語には、育てる・育成するといった意味があり、日本の吹奏楽をもっと元気に楽しく発展させていきたいという思いをこめています。みなさまのブラバンコンシェルジュとして、様々な情報を発信していきます。