「躍動する魂~吹奏楽のための」で、第1回全日本吹奏楽連盟作曲コンクール(2008年)第1位を受賞、翌年の吹奏楽コンクールの課題曲がデビュー作品となった江原大介氏。以降、吹奏楽・アンサンブル作品を多数発表して精力的に活動しています。
江原氏は少し異色の音楽経歴の持ち主。
音楽との出会いは小学6年生。ハードロックに心を奪われ、「こんなかっこいい音楽を自分も作りたい!」に作曲家になると決意。エレキギターからコード譜に触れたものの楽譜が読めない・・・。そこで、苦手な五線譜を克服すべく15歳からピアノを開始。ジャズのコードやポピュラー音楽を学んでいくうちに、次第に物足りなさを感じはじめ、クラシック音楽の世界へ。高度な音楽理論の深い探求へと進み、才能を磨き上げていきました。
幼少期からピアノやソルフェージュを学んできた音楽エリートから見ると、やや遠回りな彼の作曲家としての歩みですが、オリジナルのスタイルを確立するには不可欠だったとも言えます。キャッチーなメロディや疾走感あふれるビート。クールでスタイリッシュな世界観を持つ楽曲の数々は、吹奏楽界に新たな風を吹き込んでいます。
この記事では、最新作からコンクール自由曲やコンサートレパートリーとして人気が高い吹奏楽作品をピックアップしてご紹介します。
江原大介 2025年発売吹奏楽作品
グレースフル・レガシィ 往古の夢幻
海上自衛隊舞鶴音楽隊の委嘱作品。2024年 同楽団により初演。
テーマは「京都の雅な伝承と歴史」。京都府北部にある舞鶴は軍港として栄えた港町。海軍の勇壮さと土地独特の風土を色濃く反映した楽曲です。日本の音階を用いたフレーズ、笙の音色も模したハーモニーなど、随所に和のエッセンスが散りばめられています。静寂〜躍動〜美しい情景〜力強く華やかな終幕へと展開するストーリー性の高い和風曲です。
カムイ~大地に宿る神秘
北海道鵡川高等学校吹奏楽部が、2020年に8人編成(原典版)を委嘱。
2024年 大江戸シンフォニックウィンドオーケストラ特別演奏会 のために樫野哲也が編成拡大版を委嘱。
「カムイ」とは北海道の先住民であるアイヌの人々の言葉で、”位の高い霊的な存在”。人間に豊かさをもたらし、時には試練を与える「神」や「自然」と似ているものと解釈されています。テーマこそ歴史的ですが、サウンドは非常に斬新。全体に張り詰めた空気感が漂いながら、感謝・尊敬・祈り・畏怖といったさまざまな感情が交錯しながら進行していくエネルギーに満ちた楽曲です。
極小編成(8人)でパフォーマンス可能。楽譜記載の全パートを演奏することで、より豊かなサウンドが得られます。
衝撃の青〈コンポーザーズ・カット・エディション〉
青稜中学校・高等学校吹奏楽部の委嘱作品として2018年に原典版を発表。
「激動」「追想」「無限」の3楽章で構成され、大きく急-緩-急の流れで進行していく、エネルギッシュな作品です。
コンポーザーズ・カット・エディションの編み直しにより、演奏時間が50秒ほど短縮、編成も中編成から小編成になって、より多くの楽団が演奏できるようになりました。
コンクール自由曲 人気作品
星屑の舞う空で
星が輝く夜空を背景に、人々の思い出や未来を想像させる物語を奏でています。音楽は緩・急・緩という明確な構成で進行しており、バンドそれぞれのストーリーを描きながら演奏してみましょう。
2024年江原大介楽曲ランキングの上位作品。極小編成で演奏可能、グレード・演奏時間ともに自由曲としてチャレンジしやすいのも人気の理由です。
蒼の躍動〈コンポーザーズ・カット・エディション〉
長崎県立口加高等学校の委嘱作品。
爆発的なエネルギーから始まり、蒼い回想と懐郷の感情、そして未来への期待や華やかさを3部構成で表現。ダイナミックなサウンドを持つエネルギッシュな作品です。2015年に出版された原典版から、編成と演奏時間を縮小し改訂。曲の長さを調整するだけではなく、フレーズやオーケストレーションを大幅に見直し。追加要素や楽譜の大きな変更もあり、新しく生まれ変わった〈蒼の躍動〉となっています。
インフィニティ
江原大介作曲作品の中でも非常にスタイリッシュで高難度。前衛的な響きや現代音楽の要素、ジャズハーモニーを感じつつも、クラシック書法で作曲された疾走感あふれる楽曲です。
原曲はサックス8重奏ですが、原曲をそのまま編成拡大したものではなく、吹奏楽作品として新たに編み直されており、聴き比べもおすすめです。
レジェンド~未来への物語~
ライナーノーツとして「この曲は様々な表情を持っていて、それぞれに物語を思い描きながら聴いて」と語るように、江原氏のクレバー且つメロディアスなフレーズが幾重にも重なり合いながら進行してく変化に富んだ構成が特徴です。
多くの極小編成団体に選ばれている人気曲で、最小12パートから演奏可能。
魂のミステリウム
2023年福岡第一高等学校吹奏楽部委嘱作品。
神秘性と力強さを兼ね備えた3楽章から成り、激しさの中に神秘性から、淡い響きの中で記憶を巡らせ、最後は魂の輝きを表現しています。各楽章がドラマティックに進み、クライマックスへと導かれます。
ゴールデンゲート
黄金へと続く門を開くように、未来への序曲となるようなイメージで作曲されました。
ベルトーンで幕を開け、フルートとクラリネットが主題を奏でます。静かなる緩徐から勢いを増し低音と高音が対峙、荒々しさと繊細さが交錯してゆきます。再び静寂が包み込み後半へ。音楽の持つ透明さや響きの立体感を感じながら演奏してください。
演奏会にオススメ!
メモリア
仲田守氏のために2022年に作曲されたソロとピアノのための作品を、吹奏楽編成でも演奏できるように編曲した作品。
基本はクラシックの書法により作曲されていますが、ジャズ・コードも用いつつ、抒情的な作風となっています。
ソロパートは、テナーサックスのみならず、任意の楽器で対応できるパート譜を封入。さまざまな楽器をソリストに演奏できる作品です。
一気聴き!アルバム「江原大介作品集 ∞ インフィニティ」
江原大介氏の人気作品をまとめたアルバムが配信限定で発売中!音楽サブスクでも、ダウンロード購入でも、お聴きいただけます。音楽鑑賞や選曲サポートとしてお楽しみください。
演奏
土気シビックウインドオーケストラ & 加養浩幸 [1][2][3][5][7]
海上自衛隊東京音楽隊 & 加養浩幸 [4][6]
収録曲
- インフィニティ
- 衝撃の青
- ゴールデンゲート
- ディープスカイ
- 祈りのノクターン (改訂版)
- 天空の夢
- 蒼の躍動
【まとめ】クール&エネルギッシュな楽曲なら江原大介作品をチェック!
フォスターミュージックの自由曲選曲ナビに「キーワードで探す」がありますが、【かっこいい】【疾走感】【シリアス】はクールな印象の楽曲にチャレンジしたい方によく使われているキーワードです。
江原大介氏の作品は、そのニーズに応えてくれるものがたくさんあります。
楽曲タイトルにもご注目を。「青」「蒼」「星」「空」などインスピレーションを掻き立てられるものが多いので、直感で選んで楽曲鑑賞も楽しいですよ。
この記事では吹奏楽曲を紹介しましたが、フォスターミュージックではアンサンブル譜も数多く取り揃えていますので、アンサンブルコンテストの選曲にもぜひご覧ください。
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吹奏楽を柱とした音楽出版社として2008年に設立いたしました。 「フォスター」という単語には、育てる・育成するといった意味があり、日本の吹奏楽をもっと元気に楽しく発展させていきたいという思いをこめています。みなさまのブラバンコンシェルジュとして、様々な情報を発信していきます。