今回は作編曲家の下田和輝(しもだ かずき)氏のインタビューをお届けします。
作曲から6年、吹奏楽小編成用に補筆・改訂し、今回ようやく正式に作品発表となった『風になびく草原』。
作品への想いはもちろん、下田先生の作編曲家としてのヒストリーも伺いましたのでぜひご覧ください!
インタビュー
「吹奏楽作品を書きたい」 原点に立ち返った曲
―『風になびく草原』の作曲に取り掛かったきっかけなどがあればおしえてください。
はい。作曲当時(2012年)尚美ミュージックカレッジ専門学校の学生だった私は、オーケストラ作品や合唱作品など、吹奏楽以外の形態の作品をただひたすらに作曲していました。
しかし、作曲を志した私の原点は「吹奏楽」。尚美3年に進級したあたりから、私の原点である吹奏楽作品を書きたいという思いが募り、結果この作品の作曲に取り掛かったのがきっかけです。
―作曲の際に意識されたことなどはありますか?
先ほどもお話ししたとおり、作曲当時オーケストラ作品や合唱作品という難解でやや実験的な作品を作っていたことがほとんどでした。
そのため、この作品では小中学生が無理なく楽しんで演奏できるような曲を目指して作曲いたしました。
―作品のテーマとなっている「草原」。下田先生にはどんなイメージが浮かんでいますか?
私にとって「草原」は非常に身近なものでした。地元である岩手県には多くの草原があり、幼少期から親や祖父に連れられて草原に足を運んでいたことによって草原に対するイメージが出来上がりました。
そんな昔の体験が契機となって、草原を題材にした作品を書きたいという思いが生まれたのだと思います。
―この曲を演奏する方たちへのメッセージやアドバイスがあればおしえてください。
『風になびく草原』を楽しんで演奏してくださることが、作曲者の私にとって一番の幸せです。 是非楽しんで演奏してください!!
中学時代 コンクール曲の感動をきっかけに
―下田先生と吹奏楽の出会いをおしえてください。
中学生になり、運動神経がほぼゼロだった私は(笑)部活の入部を文化部に絞りました。
しかし当時その中学校は文化部が吹奏楽部しかなく、選ぶ余地もなく迷わず吹奏楽部に入部し、トランペットを担当しました。
―消去法で吹奏楽部だったんですね(笑)
はい(笑)
でも、吹奏楽部に入部してトランペットを演奏することは、特に嫌々やっていたわけではなく、むしろ吹奏楽曲(オリジナル・編曲問わず)やトランペットを演奏することがそれなりに好きでした。
元々は父が音楽好きで、母も自宅でピアノ講師をしているなど音楽が好きな両親のもとに生まれたこともあり、子供の頃から音楽が好きだったんです。
小学生高学年から入部することができる学校の金管バンドで当時姉がコルネットを吹いていたこともあり、成り行きで私も入部し、コルネットを担当していました。
―作曲にシフトしたきっかけなどはあったんですか?
中学二年生のときですね。顧問の先生から夏のコンクール曲の楽譜を渡され、部員全員でその参考音源CDを聴いた時に「なんて良い曲なんだ!!」と子供ながらに感動したのを覚えています。曲はジェームズ・スウェアリンジェン作曲の『喜びの音楽を奏でて!』です。
それからというもの、私はこの曲をインターネットで調べ、出版元であるバーンハウスのウェブサイトを訪れると、出版されている曲のサンプル音源をスウェアリンジェン問わず1曲1曲隈なく聴きました。
そしてバーンハウス出版の曲をたくさん聴いているうちに、「たくさん楽器を用いて1つの音楽が成り立つその楽譜はどのような作りになっているんだろう」と興味を抱き、『喜びの音楽を奏でて!』のスコアを読んでいるうちに「自分も作曲してみたい!」と思うようになりました。
これが吹奏楽作品を書くきっかけです。今となってはその曲をコンクール曲に選んだ顧問の先生に大変感謝しています。
―作曲家としての喜びややりがいを感じるときはどんなときですか?
数週間で完成させる作品もありますし(ちなみに『風になびく草原』は1週間足らずで曲を完成させた記憶があります)、作品によっては半年以上かけて曲を完成させる作品もあります。
やはり作曲している時というのは登山のように息苦しく、今にも山麓の登山口に引き返したくなるような気持ちでいっぱいになるのですが、作品を完成させた(登頂した)時というのは言葉では表せない何とも言えない喜びがあります。
何よりも、幾多の思いが詰まったそれらの作品を実際に演奏してくださる方・団体様がいらっしゃり、とてもありがたい思いでいっぱいです。この場をお借りして心から感謝申し上げます!
―今後挑戦したいことなどはありますか?
現在、1時間ほどの長大な吹奏楽曲を1作品構想しています。30歳あたりまでに完成させることを目標に、日々少しずつ着想を膨らましているところです。 元々スケールの大きい曲を書くのが大好きなので、渾身の作品を完成できるよう頑張ります!
―最後に、このサイトを見ている方へのメッセージをお願いいたします。
私のインタビュー記事をご覧くださり誠にありがとうございます。 今後も貪欲に作品を発表し続けますので、どうぞ宜しくお願いいたします!
―下田和輝先生、ありがとうございます。渾身の作品、楽しみにしています!
風になびく草原
この作品は、2012年冬に吹奏楽中編成用の作品として作曲され、特に初演の機会がないまま時が過ぎて行きましたが、今回の「20人のコンクールレパートリー Vol.4」用に吹奏楽小編成用に補筆・改訂をし、作曲から約6年を経てようやく正式な作品発表に至りました。
曲名「風になびく草原」が示す通り、風になびく草原が織り成す情景を描いています。それは疾風によって波打つ草原や、穏やかな風に揺られる草原など、情景はさまざまです。
この作品に関しては、特にこれといった明確なストーリーはありませんので、演奏団体・演奏者それぞれで考えて、ぜひ演奏に反映してみてください。
演奏にあたって、Percussion 2のS.D.とB.D.は、打楽器の人数が少ない場合はB.D.をドラムセットのバスドラで代用してください。(下田和輝)
- 編成: 吹奏楽小編成
- グレード: 2+
- 演奏時間: 6分5秒
- FML-0231 フォスターミュージック
- 収録:20人のコンクールレパートリーVol.4 「ちはやふる」
プロフィール|下田和輝(しもだ かずき)
1992年1月14日、岩手県洋野町生まれ。
幼少のころからフュージョンやスムースジャズをはじめさまざまな音楽に触れ、小学校4年生から学校のクラブの金管バンドに所属。コルネットを担当。
洋野町立種市中学校では吹奏楽部に所属し、トランペットを、進学先の岩手県立久慈高校では吹奏楽部でユーフォニアム・学指揮・副学指揮を担当。
中学生のころ、作曲に興味を持ち始める。
高校卒業後、作曲を一から学ぶため上京。
2014年3月、尚美ミュージックカレッジ専門学校音楽総合アカデミー学科作曲コース(4年制)を卒業。
作曲を菊池幸夫、高橋伸哉、広瀬勇人の各氏に師事。
2012年度のJuCuStage主催「学生作曲家選手権2013」において、「Voyage」が佳作を受賞。
2013年度のJuCuStage主催「第2回全国学生作曲選手権大会」において、サクソフォーン4重奏作品「Across the City」が優秀賞(2位)を受賞。
2013年度の「第5回 日本管打・吹奏楽学会作曲賞」において、吹奏楽作品「オータム・ファンタジー」が作曲賞(一位)を受賞。
2015年度の「第7回 日本管打・吹奏楽学会作曲賞」において、吹奏楽作品「夜明けの海岸」が本選ノミネート。
大江戸シンフォニックウィンドオーケストラ第3・4回定期演奏会作品公募入選。
「21世紀の吹奏楽 第18回“響宴”」作品公募において吹奏楽作品『吹奏楽のためのファンファーレ「イン・トライアンフ」』が入選。
「21世紀の吹奏楽 第20回“響宴”」作品公募において吹奏楽作品『DaJa ~南部地方盆唄「ナニャドヤラ」による~』が入選。
「21世紀の吹奏楽 第21回“響宴”」作品公募において吹奏楽作品『吹奏楽のための序曲「チアーズ!』が入選。
平成29年度 第50回JBA「下谷賞」受賞。
現在、吹奏楽の作曲・編曲を中心に活動をしている。
吹奏楽を柱とした音楽出版社として2008年に設立いたしました。 「フォスター」という単語には、育てる・育成するといった意味があり、日本の吹奏楽をもっと元気に楽しく発展させていきたいという思いをこめています。みなさまのブラバンコンシェルジュとして、様々な情報を発信していきます。