「青銅の騎士」はオリジナルのバレエ組曲より、いまや吹奏楽での方がメジャーなのではないかと思われるほど。吹奏楽コンクールやコンサートでも取り上げる楽団が増えています。
バレエ組曲「青銅の騎士」より: The Bronze Horseman
「青銅の騎士」はどのように生まれ、吹奏楽でも人気を得るようになっていったのでしょうか。
バレエ「青銅の騎士」
プーシキンの長編叙情詩、グリエールの音楽、ザハーロフの振付けによって、バレエ「青銅の騎士」は世に出ました。ザハーロフは文学作品のバレエ化を得意とし、ソビエトのドラマティック・バレエへの道筋を作った人物です。
プーシキンの「青銅の騎士」を元に、他の要素を組み合わせてバレエ化しました。バレエ化に欠かせない音楽を担当したのがグリエールです。グリエールはロシア革命後もロマン派音楽の伝統をふまえた作曲を続け、ソ連において模範的作曲家と認められていました。
ロマン派音楽をベースにするドラマティックな曲は、セリフのないバレエの言葉として最適だったのでしょう。
あらすじ
舞台はロシアの人工都市サンクト・ペテルブルグ。「青銅の騎士」とは、サンクト・ペテルブルグの元老院広場に立つ銅像のことで、街の創始者であるピョートル1世を讃えて建てられたものです。
ネヴァ河がバルト海に注ぐ河口の沼地を埋め立てて作られたこの街は「北のヴェニス」ともいわれる美しい水の都。しかし、悪天候になる度に大洪水に襲われる水難の絶えない街でもありました。
物語の主人公エフゲニーは、その大洪水で最愛の恋人のパラーシャを失ってしまいます。人生の夢と希望をも打ち砕かれたエフゲニー・・・。彼は日が経つにつれ、恋人を奪っていったのは洪水ではなく、洪水が起きるような街を作ったピョートル1世=「青銅の騎士」のせいだ!と思い込むようになります。
それからというもの「青銅の騎士」に追われる悪夢にうなされ、ついに狂気の人となったエフゲニーは、広場に君臨する青銅の騎士像へ戦いを挑む・・・
バレエ組曲「青銅の騎士」
グリエール作曲の「青銅の騎士」は以下の構成になっています。
- 序奏
- 元老院広場にて
- 広場での踊り
- エフゲニー
- パラーシャ
- 抒情的な情景
- ダンスの情景
- 占い師
- 輪踊りとダンス
- 第2の抒情的な情景
- ワルツ
- 嵐の始まり
- 偉大なる都市への讃歌
男女の出会い、恋人同士の幸せな時間に多くの曲が書かれています。嵐で恋人を亡くした主人公は気が触れ、銅像である青銅の騎士へ戦いを挑み、絶命するのですが、そこで終わりません。
最後に町が洪水を乗り越えて再び栄えたことを高らかに歌い上げます。聴かせどころが次々に現れる名曲です。
編曲者 石津谷治法
吹奏楽全国大会常連校というより、金賞常連校と言っても過言ではない市立習志野高校吹奏楽部。それを率いているのが「青銅の騎士」編曲者の石津谷治法です。
習志野高校と言えば、コンクールの自由曲に必ずオーケストラの編曲ものを選ぶことでもよく知られており、その編曲は毎年顧問である石津谷氏が手がけています。「編曲をしては生徒に演奏させるのが生き甲斐」というほど音楽をこよなく愛する人物です。
石津谷氏とオーケストラとの出会いは、出身校である法政大学交響楽団にあります。OB・OG会のホームページにも「石津谷の目指す吹奏楽サウンドは柔らかなオーケストラのようなサウンド」と寄稿しており、自身のオーケストラでの経験がベースになっていると語っています。
吹奏楽でオーケストラの表現を目指す石津谷が編曲した「青銅の騎士」は、オリジナルと同じく、聴くものを魅了する作品です。
吹奏楽曲「青銅の騎士」
スピード感あふれる軽快な「元老院広場にて」で始まり、一転、「エフゲニーとパラーシャ」では心にしみるような旋律が切々と奏でられます。再び、速いテンポでダイナミックな「踊りの情景」へ。スポーツ応援などで使われることもあるとか。フィナーレは、荘厳な旋律がたっぷりと高らかに歌い上げられる「偉大な都市への賛歌」。
約10分の間にオリジナル曲の魅力と吹奏楽の魅力を余さず伝える編曲になっています。
[吹奏楽-レンタル譜] バレエ組曲「青銅の騎士」より: The Bronze Horseman 商品コード: 102-02637 作曲:レインゴリト・グリエール (Reinhold Gliere ) 編曲:石津谷治法 (Harunori Ishizuya) 編成:大編成 グレード:4 演奏人数の目安:52人 ※原則として各楽器1名(optionalは-1、div.は+1)で算出 演奏時間:10分6秒 出版社:フォスターミュージック (fostermusic Inc.) |
コンクール自由曲ベストアルバム2 「白鳥の湖」(再プレス盤): fostermusic Best Collection 2 – SWAN LAKE
「青銅の騎士」が収録されたCD。ほかにも「白鳥の湖」、「展覧会の絵」という、クラシックを吹奏楽にアレンジした曲や、吹奏楽界で人気の邦人作曲家の作品が9曲収録されています。
ボーナストラックには、コンサートなどで喜ばれる「ふるさと」。海上自衛隊東京音楽隊のレベルの高い演奏で、聴き応えのあるCDとなっています。自由曲の選曲で悩んでしまうとき、ヒントを与える一枚となることを願って作りました。
[吹奏楽-CD] コンクール自由曲ベストアルバム2 「白鳥の湖」(再プレス盤): fostermusic Best Collection 2 – SWAN LAKE 演奏:海上自衛隊東京音楽隊 ( Japan Maritime Self-Defense Force Band,Tokyo.) 指揮:熊崎博幸 (Hiroyuki Kumazaki), 加養浩幸 (Hiroyuki Kayou) 出版社:フォスターミュージック (fostermusic Inc.) |
ドラマティックな「青銅の騎士」を吹奏楽で!
”管弦楽の曲をどれだけ吹奏楽器で表現できるかにチャレンジしたい”と語る石津谷氏は、よりオリジナルに近づけるために編曲をするといいます。
バレエ組曲「青銅の騎士」は、ソビエト連邦時代に作曲された作品。その背景を知ることで、作品への理解をより深めることができるでしょう。ドラマティックで聴き応えのある「青銅の騎士」をぜひ、レパートリーに加えてください。
吹奏楽を柱とした音楽出版社として2008年に設立いたしました。 「フォスター」という単語には、育てる・育成するといった意味があり、日本の吹奏楽をもっと元気に楽しく発展させていきたいという思いをこめています。みなさまのブラバンコンシェルジュとして、様々な情報を発信していきます。